ソフトバンクグループは2月12日、2024年10〜12月期決算が市場予想を大きく上回る黒字となったと発表した。OpenAIへの追加出資に伴う評価益が利益を押し上げ、孫正義会長兼社長が掲げるAI投資戦略の収益化に弾みをつけた。純利益は3693億円で、前年同期の9311億円の赤字から急回復した。
Vision Fundも黒字を維持
今回の決算を支えた最大の要因は、中核事業である投資ビジネスの改善だ。傘下の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド1」は、インドのホテル予約スタートアップOyoの評価引き上げなどにより、今四半期に1927億円の投資利益を計上した。続く「ビジョン・ファンド2」もCoupangやDiDiの株価上昇を追い風に、四半期ベースで1180億円の黒字を確保している。
市場関係者の間では、今回のV字回復は構造的な改善か、一時的な評価益による上振れかを見極める段階にあるとの声が出ている。UBS証券のアナリストは決算発表前のリポートで「外部環境の変化による評価損益の振れ幅が依然として大きい」と指摘していた。実際、ソフトバンクグループの四半期純利益は過去5四半期で最も高い水準を記録したが、これはOpenAIに関する未実現利益を反映したものだ。
OpenAI出資がもたらす巨額の評価益
今期の決算を特異なものにしているのが、AI開発の急先鋒であるOpenAIへの戦略的投資である。24年10月、ソフトバンクグループはOpenAIが実施した66億ドルの資金調達ラウンドに参加し、5億ドルを出資した。このラウンドによりOpenAIの企業価値は1570億ドルと評価され、その後の市場での再評価や追加の権利調整により、ソフトバンクの持分には大幅な含み益が発生した。
同社のCFOである後藤芳光氏は決算会見で「AIはもはや選択肢ではなく、人類の進化に不可欠なインフラになる」と言明し、孫氏のAI特化戦略を改めて強調した。今回のOpenAIへの投資が短期間で評価益に結びついたことは、孫氏が株主に示してきた「AI革命への布石」が具体的な数字を伴い始めた証左といえる。
ARMの成長加速が支える安定収入
投資育成と並ぶ収益基盤である英半導体設計子会社ARMホールディングスも好調を維持した。前四半期に引き続き、スマートフォン向けライセンスに加え、データセンターとAI向けプロセッサのロイヤルティ収入が拡大。これによりARM部門の調整後EBITDAは前年同期比で40%増の水準を達成し、ソフトバンクグループ全体の純資産価値向上に寄与している。
ARMは現在、AI時代のエッジコンピューティング需要を取り込もうと積極的な研究開発投資を進めている段階だが、もはや単独での上場企業としての資金調達力も備えた。ポスト京大の富岳やNVIDIAのGPUに代表されるAI半導体ブームの裾野で、ARMの設計図は不可欠な存在になりつつある。
日本のAIインフラ投資競争が激化
ソフトバンクグループのAI戦略加速は、国内通信子会社ソフトバンクの動向にも波及している。同社は今冬、OpenAIと共同開発した法人向けAIサービス「Crista Intelligence」を本格展開し、NTTやKDDIがしのぎを削る企業向け生成AI市場に参入した。AIの計算基盤となるデータセンター事業では、系列のSBテクノロジーがシャープの旧工場跡地を取得し、大規模施設を建設する計画を公表済みだ。
日本のAIインフラ投資は官民一体で拡大しており、これまで海外スタートアップへの出資が中心だったソフトバンクグループも、国内の経済安保や産業競争力の文脈から、初めて足元の日本に巨額資金を振り向けつつある。今回の四半期決算で示されたOpenAIの含み益は、孫氏が掲げるAI銘柄集中ポートフォリオの財務的な威力を示した一方、株式市場の地合いに左右されるリスクも改めて浮き彫りにしている。