エヌビディア株が7営業日で20%上昇し、時価総額6兆ドル突破が現実味を帯びてきた。人工知能向け半導体需要の爆発的拡大を背景に、投資資金が一極集中する構図が強まっている。同社の株価急騰は、AIインフラ投資が当面減速しないとの市場の確信を映し出す。

株価上昇をけん引する機関投資家の先回り買い

4月10日の米国市場でエヌビディア株は前日比3.1%高の142.14ドルで取引を終え、7日間の騰落率はプラス20.3%に達した。この間、同社の時価総額は約9000億ドル膨らみ、5兆8000億ドル台に乗せている。複数の米証券アナリストによると、4月下旬に控える決算発表を前に、ヘッジファンドや年金基金が想定を上回るデータセンター向けGPU出荷を見越して持ち高を積み増している。

背景にあるのは、主要クラウド事業者による2025年の設備投資計画だ。アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、アルファベットの3社合計で少なくとも2500億ドルを投じる見通しで、その4割超がAIサーバー関連に振り向けられると推定されている。エヌビディアのH200や次世代Blackwellアーキテクチャ製品はこの予算の中心的な調達対象であり、同社のデータセンター事業売上高は2025年度に前年比2倍の1500億ドルに迫るとのアナリスト予測も出ている。

サプライチェーン逼迫がもたらす価格支配力

エヌビディアの強気相場を支えるもう一つの柱は、高度な製造プロセスを独占するTSMCとの関係だ。最新Blackwellチップは3ナノメートル世代のプロセスで生産され、歩留まり改善が進む一方、パッケージング工程ではCoWoS-L技術の供給制約が続く。エヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者は先週の投資家向け説明で「需要は供給を大きく上回り続ける」と述べ、2026年まで需給逼迫が継続するとの見解を示した。

この構造的な供給不足がエヌビディアの粗利益率を押し上げている。直近四半期の調整後粗利益率は76.7%と、半導体業界で突出した水準にある。競合のAMDや自社開発チップを進めるグーグル、アマゾンが代替供給源として台頭しつつあるが、大規模言語モデルの学習用途ではエヌビディアのCUDAソフトウェア基盤が事実上の標準であり、乗り換えコストの高さが競争障壁として機能している。

AI投資の持続性を問う声とそれへの反論

7日間で2割という急ピッチな上昇に対し、バリュエーションの過熱を懸念する声は少なくない。現在の株価は向こう12カ月の予想利益に対し約38倍で取引されており、過去5年平均の32倍を上回る。ベア派のアナリストは「顧客であるクラウド大手のAI投資が収益化に結びつくまでには時間がかかり、設備投資の減速リスクを市場は過小評価している」と警鐘を鳴らす。

これに対し強気派は、AI需要が学習から推論へと重心を移す点に着目する。推論ワークロードは学習に比べチップ使用時間が長期化する傾向があり、一度導入されたエヌビディアのインフラは継続的な更新需要を生む。モルガン・スタンレーの最新リポートは「推論市場の立ち上がりにより、AI向け半導体の需要は2028年まで年平均40%成長が可能」との試算を示した。

日本半導体関連銘柄への波及

エヌビディアの急伸は東京市場でも材料視され、アドバンテストや東京エレクトロン、レーザーテックといった製造装置・検査関連株に買いが波及している。アドバンテストはエヌビディア向けGPUテスターで高いシェアを持ち、4月第2週の週間上昇率は8%を超えた。一方、為替の円高進行が輸出採算を圧迫する構図もあり、日本株の上値は米国ほど素直に追随していない。

時価総額6兆ドルの先を占う指標

エヌビディアが6兆ドルに到達すれば、現在約3兆ドルのアップルやマイクロソフトを大きく引き離し、世界の株式市場で類例のない規模となる。しかし市場関係者がより重視するのは絶対額よりもフリーキャッシュフローの成長率だ。同社の2025年度フリーキャッシュフローは600億ドル超と予測され、この数字が800億ドルに近づけば、さらなるリレーティング余地が生まれるとの試算がウォール街で広がっている。

アナリストの間では、5月に予定される次回決算発表での売上高ガイダンスが当面の試金石との見方が支配的だ。市場予想の中央値である四半期売上高420億ドルを大幅に上回る数字が出れば、時価総額6兆ドル到達は時間の問題となる。逆に需要の踊り場を示唆するガイダンスであれば、急ピッチの上昇に対する反動も大きくなるとの指摘が投資家の間でくすぶっている。