米中両政府の通商交渉トップが韓国ソウルで会談し、約10年ぶりとなる米大統領の北京訪問に向けた地ならしを進めた。ソフトバンクグループはOpenAIへの投資評価額の上昇により四半期利益が急増し、ChatGPT開発元への追加投資に自信を深めている。
ソウルで米中通商トップが最終調整
米国のスコット・ベッセント財務長官と中国の何立峰(ホー・リーフォン)副首相は7日、ソウルで通商協議を開いた。協議の目的は5月13日から15日にかけて予定されるトランプ米大統領と習近平国家主席との首脳会談の準備だ。米国務省と中国商務省の発表によると、両氏は関税措置の緩和や半導体輸出規制、中国の過剰生産問題などを議題に約3時間にわたって意見を交わした。米大統領の訪中は2017年以来、実に9年ぶりとなる。
当初は3月に予定されていた首脳会談だが、イランを巡る軍事衝突の激化を受けて延期されていた。ベッセント長官は会談後、記者団に対し「両首脳が建設的な対話を行うための土台づくりができた」と述べ、一定の手応えを示した。市場関係者の間では、今回の首脳会談で部分的であれ関税引き下げが合意されれば、世界の貿易環境に好転材料となるとの見方がある。一方で、両国の通商交渉筋によれば、半導体先端技術の対中規制を巡る溝は依然深く、共同声明の文言調整は難航が予想される。
ソフトバンクGの純利益が前年同期比4倍に急拡大
ソフトバンクグループが7日発表した2026年3月期第4四半期決算は、純利益が前年同期比で約4倍の1兆2000億円に達した。UBS証券とCLSAのアナリスト予測の中央値である9800億円を大きく上回る水準だ。好業績の最大のけん引役は、同社が2024年から段階的に出資してきた米OpenAIの評価額上昇である。
OpenAIは直近の資金調達ラウンドで企業価値が4000億ドル超と評価され、ソフトバンクGが保有する株式の含み益は四半期ベースで約80億ドルに膨らんだ。決算説明会で宮川潤一最高財務責任者は「生成AIの商用化は想定より速いペースで進んでいる。OpenAIとの資本関係をさらに深化させる局面だ」と述べ、追加出資の可能性に言及した。宮川氏は具体的な金額に触れなかったものの、複数の市場関係者によれば50億ドルから100億ドル規模の追加投資が検討されているという。
孫正義氏のAI戦略が転換点を迎える
今回の決算は、孫正義代表取締役会長兼社長が掲げる「AI革命への集中投資」戦略が財務面で成果を生み始めたことを示す。ソフトバンクGはビジョン・ファンドを通じたスタートアップ投資で多額の損失を計上してきたが、OpenAIへの直接出資が収益構造を変えつつある。同社は5月に入り、米国でAIデータセンター事業を手掛ける関連会社SB OpenAI Japanの新株発行も発表しており、AIインフラ分野への資本配分を加速させる構えだ。
ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリストは「ソフトバンクにとってOpenAIは単なる投資先ではなく、ARMや通信事業と並ぶ中核事業になり得る」と分析する。もっとも、外部環境には不透明要素が残る。米国の対中半導体規制がAI向け先端チップのサプライチェーンに波及すれば、ソフトバンクが描くAIエコシステム構想全体の遅延リスクにつながるためだ。
日本市場に波及する米中対話とAI投資拡大
米中首脳会談の行方は日本企業の事業戦略にも直結する。特にAI開発に不可欠な半導体や製造装置を手掛ける東京エレクトロン、レーザーテックなどの日本企業は、規制の枠組み次第で中国向け輸出の見通しが大きく変わる。ソフトバンクGのAI投資拡大の動きは、国内の関連産業にも資金面と技術面で影響を与える可能性がある。
大和総研のリポートは「ソフトバンクGがOpenAI関連のデータセンター投資を拡大すれば、日本のクラウドサービス市場における競争環境が一変する」と指摘する。ソフトバンクGの株価は決算発表翌日の7日、一時前日比3.2%高の9640円まで上昇し、年初来高値を更新した。市場では今月後半に予定される米中首脳会談の具体的成果と、ソフトバンクGによるOpenAI追加投資の正式発表が、短期的な株価の方向性を決める鍵になると受け止められている。