OpenAIのサラ・フライアー最高財務責任者(CFO)は、同社が史上最大規模とされる私募資金調達を完了した後も、追加の資本調達に踏み切る可能性があると明らかにした。需要急増に伴う計算資源の深刻な不足が主因で、生成AI開発競争の最前線で資金力が一段と経営の鍵を握る構図が鮮明になっている。

フライアーCFOは28日、ブルームバーグ・テレビジョンのインタビューで、対話型AI「ChatGPT」の爆発的普及を背景に「計算能力の制約が依然として厳しく、さらなる設備投資を検討せざるを得ない局面だ」と述べた。同社はすでに数百億ドル単位の調達を実施したと伝えられるが、データセンター拡充や専用半導体の確保に必要な資金はそれを上回るペースで膨らんでいる。

私募市場で塗り替わる資金調達の最高額

複数の関係者によると、OpenAIは直近の増資ラウンドでベンチャーキャピタルや政府系ファンドから400億ドル超を集め、企業価値評価額は3000億ドルに迫る水準にある。これは未上場企業の資金調達として過去最大級とされ、従来のテクノロジー新興企業の調達規模を大きく引き離す。フライアーCFOはその規模について「前例のない額」と形容した一方で、「最終的に目標とする計算能力にはまだ達していない」と追加調達の必然性を強調した。

この背景には、大規模言語モデルの学習と推論に要するGPUやTPUといった先端半導体の慢性的な供給不足がある。OpenAIが展開するGPT-4シリーズの最新モデルはパラメーター数が飛躍的に増大し、一度の学習に数千基のGPUを数カ月稼働させる必要がある。加えて有料版ChatGPTの企業導入が加速し、推論処理の負荷も指数関数的に伸び続けている。

逼迫する計算資源とインフラ投資競争

フライアーCFOはインタビューで「現在のボトルネックは資金そのものよりも、確保した資金をどれだけ迅速に計算能力へ変換できるかにある」と指摘する。実際、同社は主要クラウド事業者との契約拡大に加え、自社専用のデータセンター建設やAIチップの内製化に向けた巨額投資を進めている。

アナリスト予測では、生成AI市場のインフラ投資総額は2025年までに年間500億ドルを突破する見通しだ。米アマゾン・ドット・コムやグーグルの親会社アルファベット、マイクロソフトなどの巨大IT企業に加え、中東やアジアの政府系ファンドもAI基盤への資金供給を競っている。マイクロソフトはOpenAIへの戦略出資に加えて独自のAIサーバー群「Azure AI」を急拡大させており、両社の関係は資本面でもインフラ面でもより密接になっている。

収益成長でも追いつかない設備需要

OpenAIの有料契約者数は世界で数億人規模に達し、収益の年率換算額は数十億ドルに乗ったと推定される。フライアーCFOは「売上高は非常に力強い伸びを示しているが、設備投資の規模がそれを上回る速度で拡大している」と述べ、外部資金への依存が当面続くとの認識を示した。

同社は法人向けのAPI提供やエンタープライズ契約を強化し、収益源の多角化を図っている。しかし1件の問い合わせに応答するコストが従来の検索エンジンより高いとされる生成AIの収益モデルは、未だ黎明期にある。損益分岐点の達成には推論コストの大幅な低減が不可欠で、その手段となる自社開発チップの実用化にはさらに数年を要する。

ソフトバンクグループなど日本勢の関与も焦点に

一連の資金調達を巡っては、ソフトバンクグループが主導する投資連合が大規模な出資を検討していると報じられている。ソフトバンクグループは子会社の英アームを通じてAI半導体設計に深く関与しており、OpenAIの自社チップ開発構想と合流する可能性がある。日本国内ではNTTやKDDIがChatGPTを活用した法人サービスを開始しており、通信各社はデータセンター需要の急拡大をにらみ国内設備を増強中だ。

半導体製造装置の東京エレクトロンやアドバンテストにとっても、世界的なAI投資の加速は追い風となる。ある国内証券アナリストは「OpenAIの追加調達表明は、単なるIT企業の資金繰り話ではなく、日本を含むグローバル半導体サプライチェーンの長期的な拡張を裏付けるシグナルだ」と分析する。生成AIの進化が、スマートフォン普及以来と称される巨大な設備投資サイクルの起点になっている。