ソフトバンクグループが2025年3月期の決算で、傘下のビジョン・ファンド(VF)事業が年間460億ドルの投資利益を計上した。このうち相当部分を人工知能(AI)開発企業OpenAIへの巨額出資の評価益が占めており、同社のAI投資戦略が単年度で過去最大級のリターンを生んだ格好だ。
投資利益460億ドルの全容
ソフトバンクの発表によると、VFの年間投資利益は約460億ドルに達し、前年の大幅な赤字から一転して過去最高水準の利益を計上した。この利益の過半は未実現評価益であり、投資先の株式価値上昇を反映したものだ。VFはこれまでWeWorkやダイナトレースなどの評価損で苦戦を強いられてきたが、今回の業績はポートフォリオ再構築の成果を色濃く示す内容となった。アナリストの間では、この利益規模はVF設立以来の累積損失をほぼ相殺する水準との見方も出ている。SBG全体の純利益は270億ドル超に達する見通しで、日本企業として過去最大級の黒字額となる可能性が高い。
OpenAI出資の含み益が牽引
今回の利益急拡大を主導したのは、対話型AI「ChatGPT」を運営するOpenAIへの投資である。ソフトバンクは2024年から2025年にかけ、OpenAIの資金調達ラウンドに総額400億ドル規模の出資を実行したと伝えられている。調達時の評価額は2600億ドル程度と見られたが、その後の追加資金流入や事業拡大期待により、非公開市場での評価額は3000億ドルを超える水準に達した。複数の関係者によれば、この評価額急騰がVFの期末評価に大きく寄与し、単独で200億ドル超の含み益を計上した可能性がある。
孫氏の「AI再編」構想と資金調達
ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏は、OpenAIを中核に据えた大規模なAIインフラ再編構想を進めている。同社はOpenAIとの合弁で米国に大型データセンターを建設する「スターゲート・プロジェクト」に参加し、総額5000億ドルの投資枠組みを表明済みだ。この資金需要に備えるため、SBGは保有するアーム・ホールディングス株やTモバイルUS株の一部売却を検討していると報じられている。VFの高収益は、こうした巨額資金調達における信用補完の役割も果たしており、金融市場でのSBGの起債条件改善につながるとの指摘がアナリストから上がっている。
日本市場に及ぼす波及効果
ソフトバンクの巨額利益は、日本の機関投資家や個人投資家のAI投資に対する心理的ハードルを一段と下げる可能性がある。国内証券会社のストラテジストは「VFの成功が示すAI産業の成長性は、日本企業によるAIスタートアップ投資の呼び水になる」と分析する。一方で、過去にWeWorkで巨額損失を出した経緯があるため、一部の国内年金基金や金融機関は評価益の実現可能性に依然として慎重な姿勢を崩していない。SBGのAIシフトが日本勢の大型投資案件にどう影響するか、次期中計の発表が待たれる。
リスク要因とVFの次の一手
未実現評価益に依存するVFの収益構造は、AI産業の成長期待がしぼめば一気に逆回転するリスクを内包する。OpenAIの企業価値は依然として非公開市場の推定に基づいており、実際の上場時の時価総額とはかい離が生じる可能性がある。また、中国のDeepSeekなど低コストAIモデルの台頭で競争環境が激化すれば、割高なインフラ投資の回収が長期化する懸念も市場関係者から出ている。VFは次期投資対象として、AI半導体やロボティクス領域の有望企業を物色中とされ、評価益頼みからの脱却を急ぐ方針だ。