トランプ米大統領が訪中した際、習近平国家主席との会談でNvidiaの先端AI半導体「H200」チップについて直接協議していたことが明らかになった。米国の対中輸出規制の枠組みを揺るがす可能性がある異例の閣僚級対話として、半導体業界に波紋を広げている。ブルームバーグが5月15日、この協議内容をスクープし、米中ハイテク覇権争いの新たな局面が浮かび上がった。
トランプ氏が習氏に提起したNvidia半導体輸出の条件とは
情報筋によると、トランプ大統領は北京での首脳会談で、Nvidiaのデータセンター向けGPU「H200」の中国輸出再開について具体的な条件を提示した。同チップは現行の米輸出規制で中国への販売が事実上禁じられているが、トランプ政権はバイデン前政権の規制枠組みを見直す姿勢を鮮明にしている。
協議では、中国企業がH200を軍事用途に転用しないことを証明する検証体制の構築や、中国市場での米国企業の知的財産保護強化が議題に上ったという。BloombergのCaroline Hyde記者は「ホワイトハウス高官から得た情報」として、この交渉が数カ月前から水面下で進められていた経緯を詳報している。
NvidiaのH200は2025年に発売された最新世代のAIアクセラレータで、大規模言語モデルの学習性能が前世代比で約2倍に向上した。中国のテック大手、百度やByteDanceはこの性能向上を切望しているが、現状ではNvidiaの対中輸出が制限されている。
Figmaの決算が示すAI時代のデザインツールの底力
一方、ブルームバーグは同日、デザインツール大手Figmaの直近四半期決算も詳しく分析している。Figmaの売上高は前年同期比38%増の9億4200万ドルに達し、AIによるデザイン業務の自動化脅威論を覆した。エンタープライズ顧客数が前年同期から倍増し、1万2000社を突破したことが成長をけん引している。
Figmaのディラン・フィールドCEOはEd Ludlow記者のインタビューで、「AIはデザイナーの代替ではなく増幅装置として機能している」と主張した。同社が先月発表したAIアシスタント機能「Figma AI」の導入後、ユーザー1人あたりの月間デザイン作成数が平均で27%増加し、むしろプラットフォームへの依存度が高まったというデータを示している。
アナリスト予測では、世界のデザインツール市場は2030年までに450億ドル規模へ成長すると試算されており、Figmaの企業価値は2025年の資金調達時に評価された210億ドルからさらに上振れする可能性がある。日本国内でも、ソニーグループやメルカリがFigmaの全社導入を進めており、AI連携機能の強化が日本企業のデザインプロセス効率化に直接的な影響を及ぼす展開となっている。
OpenAIのCFOが示唆する大型追加資金調達の行方
OpenAIのサラ・フライアーCFOはCaroline Hyde記者との単独インタビューで、直近の資金調達ラウンド完了後も、さらなる資本調達の可能性に言及した。同社は2026年3月に400億ドルの資金調達を完了したばかりだが、データセンター拡張と基盤モデル開発の加速に向け、数百億ドル規模の追加調達を検討しているという。
フライアーCFOは「AIインフラへの需要は我々の当初想定をはるかに超えている」と述べ、2027年までに必要となる総投資額が1000億ドルを突破する可能性を示した。調達手段としては、戦略的投資家からの私募に加え、IPOも選択肢から排除していない。OpenAIの企業価値評価はすでに3000億ドルを超えており、実現すればテクノロジーセクター史上最大級の上場案件となる。
AI規制と半導体輸出を巡る米政権のジレンマ
トランプ政権のNvidia半導体輸出協議は、政権内でも評価が分かれている。国家安全保障担当の大統領補佐官は中国への先端技術流出リスクを警告する一方、商務省は米半導体企業の収益機会確保を重視する立場だ。Nvidiaの2026年度第1四半期のデータセンター向け売上高は480億ドルで、このうち中国向けは規制の影響で全体の4%未満に落ち込んでいる。
中国の半導体自給率は2025年時点で約27%と推定され、依然としてNvidia製GPUへの依存度は高い。習政権は国内半導体企業への補助金を2027年までの計画で総額520億ドルに拡充したが、H200に匹敵する性能の国産AIチップ実用化には少なくとも3年から5年かかる見通しだ。
テクノロジー覇権競争が生む新たな産業構造
米中首脳によるNvidia半導体協議は、AI技術を軸にした国際秩序の再編を象徴している。輸出規制の枠組み変更は、日本の半導体製造装置メーカーにも波及効果をもたらす。東京エレクトロンやSCREENホールディングスなど先端装置を手がける日本企業は、米国の対中規制方針に輸出管理ポリシーを連動させており、規制緩和が進めばビジネス機会の拡大につながる可能性がある。ただし、軍事転用リスクへの懸念は依然として強く、米中協議の帰趨はアジアのサプライチェーン全体を左右する不確定要素として注視する必要がある。