AI向けデータセンター投資の裾野が拡大する中、Nvidiaの主要サーバー組み立てパートナーである鴻海精密工業が2024年10〜12月期決算で市場予想を上回る増益を達成した。AI開発に不可欠なハードウェア支出の持続性を改めて示す結果となった。
鴻海が発表した決算によると、純利益は前年同期比で2桁の伸びを示し、アナリストの事前予測を大きく超えた。同社の劉揚偉董事長は声明で、AIサーバー事業が売上高全体の成長を牽引していると明言している。
AIサーバー需要が連結売上高を押し上げ
AI向けサーバー需要の急拡大が鴻海の業績構造を変えつつある。同社のクラウド・ネットワーキング部門は、データセンター事業者からの受注増加により過去最高の売上高を記録した。特にNvidiaの最新GPU「Blackwell」を搭載したサーバー製品の出荷が本格化したことが大きく寄与した。
米国の主要テクノロジー企業は2025年に向けてAIインフラ投資を加速しており、MicrosoftやAmazon、Googleはそれぞれ数百億ドル規模の設備投資計画を公表している。鴻海はこうしたハイパースケーラー各社の主要サプライヤーとして、需要を取り込む態勢を築いている。
同社はサーバーに加えてAIデータセンター向けの液冷ソリューションなど周辺機器の開発も進めており、ハードウェアのトータルサプライヤーとしての地位確立を目指している。半導体の供給制約は緩和傾向にあるものの、先端パッケージングの生産能力が依然として需要拡大のペースを規定する要素となっている。
世界中で続くデータセンター建設ラッシュ
IT調査会社のGartnerとIDCの推計によると、世界のデータセンター向け支出は2025年に前年比で20%以上の増加が見込まれている。足元では北米だけでなく、中東や東南アジアでも大規模なデータセンタープロジェクトが相次いで発表されている。
鴻海は台湾に加え、ベトナムやメキシコなど世界各地の生産拠点でサーバーの組み立て能力を増強中だ。劉董事長は、地政学リスクに対応した分散生産体制の構築が、顧客からの信頼獲得につながっていると指摘している。
人工知能の導入が産業界全体に広がるにつれて、エッジコンピューティング向けの小型AIサーバー需要も立ち上がってきた。鴻海は通信機器分野で培った設計力を生かし、工場の自動化や自動運転分野への展開も視野に入れている。
日本企業への波及広がるサーバー需要
鴻海の業績拡大は日本企業のサプライチェーンにも影響を与えている。同社が調達する高周波基板材料では、三菱ガス化学やAGCの製品が採用されており、AIサーバー向けの出荷が増加傾向にある。また、サーバー向けコネクターで実績を持つヒロセ電機や第一精工なども、鴻海の生産拡大に伴う恩恵を受けている。
NECや富士通は自社のAIソリューション開発を加速させており、鴻海のサーバー生産能力は日本市場向けの安定的な供給源としても存在感を高めている。データセンターの電力効率が課題となる中で、村田製作所の積層セラミックコンデンサーやTDKの電源モジュールといった省電力部品の需要も拡大基調にある。
このように、AI向けハードウェアの成長は単なる一過性のブームではなく、部材メーカーや装置メーカーを含む幅広い産業構造の再編を促している。
関税リスクとサプライチェーン再編の影響
米トランプ政権による関税政策の不確実性は、鴻海を含む電子機器受託製造サービス業界全体にとって懸念材料となっている。同社はメキシコ工場での生産を拡大しているが、対米輸出における関税引き上げの可能性が収益の下振れリスクとして意識されている。
鴻海はこのリスクを緩和するため、テキサス州に大規模なサーバー組み立て拠点を新設する計画を進めている。同社が手掛けるAppleのiPhone生産とは異なり、サーバー製造は比較的少人数のラインで対応できるため、米国内生産の採算性は確保しやすいとの見方がアナリストの間で広がっている。
次世代AIモデルの学習に必要な計算資源は指数関数的に増加しており、サーバー需要の構造的な拡大は当面続くとの予測が優勢だ。サプライチェーンの地理的分散と技術進化の双方に対応できる企業が、次の成長フェーズを主導することになる。