AnthropicがAkamaiと18億ドル規模のAIクラウド契約を締結
生成AIスタートアップのAnthropicが、米クラウド大手Akamai Technologiesと総額18億ドルの複数年契約を結んだことが明らかになった。Bloomberg Newsが複数の関係者の話として報じた。Anthropicは大規模言語モデル「Claude」の学習・推論インフラを従来のAmazon Web ServicesやGoogle Cloudから拡大し、供給網の多様化を急いでいる。
サードパーティクラウドへの初の本格進出
関係者によると、Anthropicが18億ドルを投じて確保するのはAkamaiのクラウドコンピューティングリソースである。Anthropicはこれまで、主要投資家でもあるAmazonとGoogleのクラウド基盤に依存してきた。今回の契約は、同社が初めてサードパーティのクラウド事業者と大型契約を結ぶ事例となる。
Anthropicの広報担当者は「複数のクラウドパートナーとの協業を拡大している」と述べたが、契約金額や具体的なサービス内容についてはコメントを控えた。Akamai側も公式な発表は行っていない。Bloombergの取材に対し、両社の関係者は契約の存在を認めたものの、詳細は非公開だとしている。
競合OpenAIとのインフラ戦略の差異が鮮明に
AI業界ではGPUなどの計算資源の確保が最重要経営課題となっている。OpenAIがMicrosoftとの独占的クラウド契約を軸にAzure上で大規模基盤を構築しているのに対し、Anthropicはマルチクラウド戦略を明確に打ち出した形だ。
Anthropicは2025年2月に発表した最新モデル「Claude 4」シリーズにおいて、コーディング能力と複雑な推論タスクでの性能が競合を上回ったと主張している。高性能モデルの需要拡大に伴い、学習・推論用インフラの増強は喫緊の課題だった。業界アナリストは「18億ドルという契約規模は、Anthropicの年間売上高見通しに対して相当な投資比率を占める」と指摘する。同社の2025年の売上高は37億ドル超との予測がある。
Akamaiがコンテンツ配信からAI基盤へ軸足を移行
Akamaiは従来、動画やウェブサイトの高速配信を担うCDN事業で知られてきたが、近年はクラウドコンピューティング分野への進出を加速させている。2024年には分散型クラウドプラットフォーム「Akamai Connected Cloud」を強化し、GPU搭載インスタンスの提供を開始した。
関係者によれば、本契約でAnthropicはAkamaiのGPUクラスタを長期的に占有利用できる枠組みを得る。Akamaiにとっては、競合のAWSやGoogle Cloudが押さえるAI企業を顧客として獲得した戦略的勝利となり、同社のクラウド事業転換の成否を占う試金石となる。Akamaiの株価は2025年に入り14%上昇しており、市場はAI需要を取り込む同社の成長戦略に一定の期待を示している。
日本のクラウド市場とAIインフラ調達に波及する示唆
今回の契約は、日本企業のAIインフラ調達戦略にも影響を及ぼす可能性がある。国内ではさくらインターネットやKDDIがAI向けGPU基盤を増強中であり、NECや富士通も自社クラウド上での大規模言語モデル運用を模索している。AnthropicがAWSとGoogle Cloudに加え、独立系クラウド事業者を第三の供給元として選定したことは、日本の事業者にとってベンダー多様化の先例となる。
特に、AI開発企業が特定のクラウド大手に依存せず、複数事業者を使い分ける「クラウド中立」の動きは、国内のGPU調達交渉の力学を変えうる。米調査会社ガートナーのシニアディレクターは「AnthropicとAkamaiの契約は、セカンダリークラウド市場の成立を加速させる象徴的事例だ」と分析している。
拡大するAIインフラ投資競争と規制リスク
AI企業によるインフラ投資は加熱の一途をたどっている。OpenAIとソフトバンクグループが主導する米国でのデータセンター計画「Stargate」プロジェクトは総額5000億ドル規模とされ、Anthropic自身も2025年1月にGoogleから追加で10億ドル超の出資を受けた。業界全体で計算資源の争奪戦が続くなか、複数クラウドの確保は調達リスクの分散に直結する。
一方、急激なAI基盤拡大に対し、米欧の規制当局は独占禁止法の観点から注視している。米連邦取引委員会は主要クラウド事業者とAI企業の資本関係を調査中であり、Anthropicのマルチクラウド化は規制対応としての布石との見方もある。Bloombergによれば、今回の契約交渉は2024年秋から進められ、2025年3月に最終合意に至った。Anthropicのインフラ多様化が、生成AI市場の競争構造をどう変えるか注目される。