米マイクロソフトCEOが法廷証言 マスク巨額訴訟でアルトマン電撃解任の経緯語る

米マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は、イーロン・マスク氏がOpenAIを提訴した裁判で証言し、2023年11月に起きたサム・アルトマン氏の突然の解任劇と、その後のマイクロソフトの対応について詳細な事実関係を明らかにした。今回の証言は、AI業界最大手の提携関係とそのもろさを浮き彫りにし、企業統治のあり方に一石を投じる内容となった。

OpenAL取締役会が下した電撃解任の裏側

ナデラCEOは証言で、2023年11月17日にOpenAIの取締役会がアルトマンCEOを解任した一報を、解任公表のわずか数分前に知らされたと述べた。取締役会は理由を「取締役会とのコミュニケーションが一貫して率直でなかった」と説明したが、ナデラ氏は具体的な説明を受けられず、強い不信感を抱いたと振り返る。

マイクロソフトはOpenAIに130億ドル超を出資する最大の支援者であり、両社の提携関係はAIモデル「GPT-4」の共同開発や「Azure」クラウド基盤の独占提供にまで及ぶ。ナデラ氏は「突然の決定はパートナーシップ全体を揺るがす重大な経営リスクだった」と法廷で強調した。

アルトマン復帰に動いた5日間の舞台裏

解任から5日間、ナデラCEOはアルトマン氏とOpenAI暫定CEOのミラ・ムラティ氏の双方と連続的に協議を続けた。証言によれば、マイクロソフトはアルトマン氏を自社のAI研究部門トップとして受け入れる用意を整え、OpenAIの従業員約770人のうち700人超がアルトマン復帰を求める公開書簡に署名する事態に備えたという。

最終的に取締役会の構成が変更され、アルトマン氏がCEOに復帰した。ナデラ氏は「マイクロソフトはOpenAIとの提携に強くコミットしていたが、取締役会の意思決定プロセスが不透明である点は看過できなかった」と語り、ガバナンス改革の必要性を取締役会に直接伝えたことを明らかにした。

マスク氏が主張する「営利化の裏切り」に対する反論

マスク氏はOpenAIが非営利から営利組織へと変貌したのは、創業時の使命である「人類全体に利益をもたらすAI開発」に対する裏切りにあたると主張している。今回の裁判でマスク氏は、マイクロソフトがOpenAIを実質的に支配し、反競争的行為を働いていると非難した。

これに対しナデラCEOは、マイクロソフトはOpenAIの取締役会に議席を持たず、経営の独立を尊重していると反論した。法廷記録によると、両社の提携契約は技術供与と収益分配に主眼を置き、議決権や拒否権は限定的である。ただ専門家の間では、圧倒的な出資比率が事実上の支配力を生んでいるとの見方も根強い。

ソフトバンクグループなど日本企業への波及効果

この提携関係の不安定さは、日本市場にも影響を及ぼしつつある。ソフトバンクグループはOpenAIと合弁事業を設立し、法人向けAIサービス「Cristal Intelligence」の展開を開始しており、出資規模は年間30億ドルに上るとされる。また日本マイクロソフトも国内データセンターでOpenAIの技術をホストする準備を進めている。

投資アナリストは「ソフトバンクが国内顧客に提供するOpenAI関連サービスは、本家で統治問題が再発すれば契約条件や提供継続の見直しリスクをはらむ」と指摘する。日本のAI導入企業にとっては、提携構造の透明性確認が一層重要になる局面だ。

巨大AI連合が直面するガバナンスと競争法のジレンマ

マスク氏が起こした一連の訴訟は、急速に規模を拡大するAI産業における寡占化への警鐘として注目を集める。現在、OpenAIの企業価値は3000億ドル近くに達し、マイクロソフト以外にもエヌビディアやソフトバンクグループが出資する構造となっている。

ナデラCEOの証言は、業界最大手の提携関係が個人間の信頼と不透明なガバナンスに依存してきた実態を白日の下にさらした。今後は米連邦取引委員会(FTC)によるAI市場の競争調査や、欧州連合(EU)のAI規制法の運用とも絡み、巨額資本が飛び交うAI業界の再編圧力は高まる公算が大きい。