オランダに本社を置くクラウドコンピューティング企業Nebius Group NVが、2025年第1四半期決算で前年同期比684%増となる売上高を計上した。人工知能(AI)向けデータセンター需要の急拡大が主因であり、同社の事業拡大ペースが市場予想を大きく上回っていることが明らかになった。

主力のGPUクラウド事業が四半期売上高の9割を占有

同社の発表によると、第1四半期の総売上高は前年同期の水準から約7.8倍に達し、このうち中核事業であるGPU(画像処理半導体)クラウドサービスが全体の約90%を占めた。AIの学習と推論に特化した大規模計算リソースを時間単位で提供する同サービスは、生成AIブームの本格化に伴い需要家が殺到。Nebiusは2024年にフィンランドの既存拠点に加え、米国カンザスシティとニュージャージーで新たなデータセンターの稼働を開始しており、供給能力の増強が売上高の飛躍的な伸びに直結した格好だ。

稼働中のGPU総数は四半期を通じて拡大を続け、特にエヌビディア製H100およびH200チップを中心とする最新世代のアクセラレーターがフル稼働に近い状態で推移した。同社のアルカディ・ヴォロジ最高経営責任者(CEO)は決算説明会で「世界のAIインフラ需要は供給を引き続き上回っており、我々の拡張計画はこの需給ギャップを埋める重要な役割を担う」と述べ、2025年通年での設備投資額を従来計画から上積みする方針を示した。

設備投資を75億ドルへ大幅積み増し、収益化フェーズへ転換

Nebiusは2025年通年の設備投資見通しを、従来の60億ドルから75億ドルに引き上げた。資金使途の中核は次世代AI半導体の調達とデータセンター建設の加速であり、年末までに運用可能なGPUクラスターの総演算能力を現状の2倍超に引き上げる計画である。投資拡大の裏付けとして、同社は4月に大手機関投資家を引受先とする12億ドルの増資を完了したほか、運用開始前のデータセンター容量の一部を複数年契約で販売する資金調達手法も活用している。

市場関係者の分析では、Nebiusの戦略は単なるインフラ提供から収益性の高いマネージドサービスへの転換を視野に入れたものとみられる。同社は決算資料の中で、第1四半期のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)が黒字化したことを明らかにし、先行投資段階から収益化フェーズへの移行が始まったと強調した。売上高に占める経常収入比率も前四半期の60%から72%へ上昇しており、契約の長期化が利益の安定性を高めている。

欧州発AIインフラ企業の台頭と米中対立の影響

Nebiusの急成長は、AIインフラ市場における欧州発プレイヤーの存在感が増していることの象徴といえる。同社はもともとロシアの検索大手ヤンデックスの親会社であったが、2022年のウクライナ侵攻後にロシア事業を切り離し、オランダへ本社を移転。旧ヤンデックスの技術者集団とデータセンター資産をAI特化型クラウド事業に再編する戦略が奏功した形である。

米中の半導体輸出規制が厳格化するなか、欧州に主要拠点を置くNebiusは規制リスクの低い調達先としての地位を固めつつある。同社のデータセンターはフィンランドと米国内に立地し、エヌビディアの先端半導体を米欧の顧客に直接提供できる体制を整えているため、中国市場への依存度が高い競合他社と比べて地政学的な優位性があるとの評価が投資家の間で広がっている。

日本市場では通信大手との提携が焦点に

日本国内においては、Nebiusと直接の資本関係を持つ企業は確認されていないが、同社のGPUクラウドサービスはすでにアジア太平洋地域の複数の通信キャリアやシステムインテグレーターを通じて国内企業に提供されている。特に、大規模言語モデルの国産化を進める通信大手や商社系データセンター事業者にとって、Nebiusのような第三者GPUプロバイダーは半導体調達の代替チャネルとして重要性を増している。

国内のあるAIインフラ関係者は「国産AI基盤の構築を急ぐ日本企業にとって、エヌビディア製GPUの安定調達は依然として最大の課題であり、Nebiusを含む海外クラウド事業者の供給余力が国内のAI開発速度を左右する局面に入っている」と指摘する。Nebiusが今後アジアでデータセンター拠点を新設する場合、日本への直接進出の可能性も排除できない。

アナリストは通期売上高10億ドル超えを予測

複数のアナリスト予測によれば、Nebiusの2025年通期売上高は10億ドルを超過する見通しである。第1四半期の実績と拡張計画の進捗を踏まえ、複数の証券会社は目標株価を上方修正した。一方で、AI向けデータセンター市場にはマイクロソフトやアマゾン・ウェブ・サービスといった大手クラウド事業者が巨額投資を仕掛けており、中長期的な競争激化がNebiusの収益率を圧迫するリスクも指摘されている。

同社は差別化戦略として、顧客企業のAIエンジニアに特化した技術サポート体制と、オープンソースのAI開発フレームワークとの親和性の高さを前面に打ち出している。AIインフラ需要が一時的なブームか構造的な成長トレンドかを見極めるうえで、Nebiusの第2四半期以降の受注動向と稼働率の推移が重要な指標となる。