GMOインターネットグループは2026年11月15日、「第4回 GMO大会議・秋・フィジカルAI 2026」を開催する。デジタル空間を越え、ロボットや自動運転などの物理世界にAIが実装される「フィジカルAI」をテーマに、政府閣僚や大学総長、国内外のAI企業トップが集結。日本が強みを持つモノづくり技術を軸に、次世代産業の主導権を握るための産官学連携の方向性が議論される。
登壇者の顔ぶれが示す「省庁横断」の政策的関与
本大会議の登壇者には財務大臣、デジタル大臣、経済産業省審議官といった複数省庁のキーパーソンが名を連ねる。これはフィジカルAIが単なる技術革新の枠を超え、財政政策、デジタル政策、産業政策を横断する国家戦略課題として認識され始めたことを示唆する。特に、ロボットや自動運転へのAI実装は、既存の産業分類や所管省庁の枠組みでは扱いきれない。複数省庁のトップが顔を揃える意義は、規制改革や研究開発予算の配分において、縦割りを排した新たな政策協調の必要性が共有されつつある点にある。
GMOが目指す「ヒューマノイド元年」の事業布石
GMOインターネットグループは2026年を「ヒューマノイド元年」と位置付け、関連事業を急速に立ち上げている。4月には人型ロボットの実証実験プロジェクト「GMOロボッツ」を始動し、自社陸上部の走行データを活用した自律走行技術の開発に着手。同時期に渋谷本社に日本最大級の研究開発拠点「GMOヒューマノイド・ラボ」を先行開設した。6月には世界最大手の人型ロボットメーカーUnitree Roboticsの国内正規代理店となり、販売から保守までをワンストップで提供する体制を整える。今回の大会議は、これらの個別事業を「フィジカルAI」という包括的な産業ビジョンに統合し、市場および政策形成への関与を深める狙いがある。
「ものづくり大国」日本の逆転を賭けるフィジカルAIの構造
AI産業の主戦場は現在、大規模言語モデルやクラウド基盤といったデジタル空間が中心だが、フィジカルAIはこの構造を物理世界へ拡張する。AIモデル(知能)をロボットや製造設備(身体)に統合するには、精密機械、センサー、制御ソフトウェアといった日本が伝統的に強みを持つ技術層が不可欠になる。生成AI開発で先行された日本にとって、フィジカルAIは再び優位に立てる数少ない分野と目される。大会議で議論される「日本の成長戦略」の核心は、デジタルインフラにおける出遅れを、フィジカルレイヤーにおける「実装力」で巻き返せるかという問いである。
空港実証からセキュリティまで、広がるフィジカルAIの実装領域
GMOの具体的な取り組みは、フィジカルAIの適用領域の広がりを示している。5月にはJALグランドサービスと共同で羽田空港のグランドハンドリング業務(手荷物搭降載など)におけるヒューマノイド活用の国内初の実証実験を開始し、2029年以降の実用化を目指す。こうした社会インフラへの実装が進むほど、重要になるのがサイバーセキュリティである。物理的なロボットが通信ネットワークに接続された瞬間、サイバー攻撃の対象となり得る。GMOは「ネットのセキュリティもGMO」という従来のセキュリティ事業ブランドをフィジカルAI時代に拡張し、安全な社会実装を差別化要素に据えようとしている。
今大会議で見るべき「政策と産業の接続」の具体性
本大会議の成否を分けるのは、抽象的なビジョン共有に終わらず、具体的な政策課題や業界標準の形成に踏み込めるかどうかである。登壇予定者にAnthropic JapanやPreferred Networksといった国内外のAI企業、Cloudflare、AIロボット協会などが含まれている点は、サイバーセキュリティやクラウド、ロボット標準化といった実行レイヤーの議題が想定されている可能性を示す。また、同時開催される「GMOフィジカルAI Awards 2026」による人材・技術の発掘が、コミュニティ形成の起点となるかどうかも、日本のフィジカルAIエコシステムにおける本大会議の実質的な影響力を測る上で注目に値する。