Sakana AIは、自社のマルチエージェントシステム「Sakana Fugu」の中核部品である指揮者モデルを、新たにGoogleのGemma 4をベースに訓練し、従来と同等の性能を達成したと発表した。この検証は、高性能AIの利用と、国内企業・行政が直面するデータ主権や調達先の多様化要求とを両立させるための技術的選択肢を広げるものだ。

指揮者モデルのベースをQwenからGemma 4へ

Sakana Fuguは、処理の振り分けを判断する小規模な「指揮者モデル」と、実際の推論や知識処理を担う「モデルプール」からなる。従来、指揮者モデルのベースにはQwen系が使われてきたが、今回の検証ではApache 2.0ライセンスのGemma 4 E2Bを採用し、同一の訓練手法を適用した。結果、独自の評価セットにおいて、既存の指揮者モデルと遜色ない正答率と同水準のコスト削減効果が確認された。これにより、指揮者モデル自体も特定のベースモデルに依存せず、モジュールとして交換可能であることが実証された形だ。

ソブリン性が求める「二重の多様化」

Sakana Fuguのモデルプールは、当初からNVIDIAのNemotronなど外部モデルを追加できる設計だった。これに加え、指揮者モデルのベースも選択可能になったことで、システム全体の構成をより柔軟にできるようになる。同社は今後の展望として、事前学習から国内で構築された「国産モデル」を指揮者モデルのベースに採用する方針も示している。これは、国内の公共調達や重要インフラ分野で高まる、モデルの開発・提供主体の所在やライセンス形態に関する説明責任の要求に応える布石とみられる。

二層構造が変えるAI導入のコスト構造

今回の成果の背景には、Sakana Fuguの「知識と判断の分離」という設計思想がある。重い計算が必要な処理はモデルプール側の大規模モデルが担い、指揮者モデルは振り分け判断に特化するため、小さなモデルで済む。この構造により、指揮者モデルの再訓練やベースモデル載せ替えのコストが抑制され、多様なニーズへの迅速な対応が可能になる。日本企業がグローバルな最高性能AIを活用しつつ、国内の規制や運用要件に合わせてシステムをカスタマイズする際、この分離設計は費用対効果の面でも現実的な選択肢を提供する。