日本のGMOサイバーセキュリティ byイエラエと韓国の防衛・航空宇宙企業LIG D&Aは、宇宙・無人システムのセキュリティ技術向上に向けた業務提携を締結した。両社はAIによる脆弱性の自動発見と修復技術を共同研究し、その成果を人工衛星やドローンに応用する。この提携は、フィジカル空間で稼働する無人機に対し、人の手を介さない自律的な防御の必要性が高まっている現実を示唆している。
提携の焦点はAIによる「自律的な防御」
今回の覚書で掲げられた中核は、ソフトウェアの欠陥を自動で見つけ出し、修正プログラムの適用からシステム復旧までを一貫して自動化する技術の共同研究だ。両社はさらに、実装前の安全性検証手法の確立も進める。これは従来の定期的な診断型セキュリティとは異なり、人間のオペレーターが常時介在できない宇宙空間や無人移動体において、システムが自立的に脅威へ対応し、稼働を継続する能力を獲得することを目指すものだ。
防衛技術と攻撃者視点、補完し合う日韓の強み
LIG D&Aは軍用偵察衛星や衛星監視レーダー、通信秘匿化など、高い信頼性が求められる防衛・航空宇宙システムの開発で50年の実績を持つ。一方のGMOサイバーセキュリティ byイエラエは、ペネトレーションテストに代表される攻撃者の視点からの脆弱性診断に強みを持つ。この提携は、堅牢性を追求する設計思想と、外部からの侵入や搾取の可能性を探る知見を組み合わせ、フィジカルAIを搭載した無人システムのセキュリティに関する新たな評価基準を生み出す試みと位置づけられる。
宇宙セキュリティ市場で進む共同研究と標準化
GMOサイバーセキュリティ byイエラエは2025年の宇宙分野参入以降、世界的なハッカー会議「DEF CON」の宇宙領域への出展や、業界団体「Japan Space ISAC」への加盟などで存在感を高めてきた。今回の提携により、概念実証を通じた具体的な案件創出へと段階が移行する。LIG D&A社のCTOは声明で「この協力は日韓市場に限定されず、世界で認められるセキュリティパートナーシップを築く」と述べており、両社は限定的な市場ではなく、グローバルな宇宙・無人システムセキュリティ市場におけるデファクトスタンダードの獲得を視野に入れている。
工場から宇宙まで広がるAIセキュリティの境界
本提携の背景には、IoT機器診断や製造業向けのセキュリティサービスを手がけてきたGMOサイバーセキュリティ byイエラエの事業拡張がある。攻撃対象領域が情報システムから、ドローンや人工衛星といった物理的な駆動システムへと拡大する中で、セキュリティベンダーに求められる知見の質も変化している。AIによる自動防御の研究は、地上の産業用ロボットや自動運搬車両など、より広範な自律機械の安全運用にも波及する可能性がある。