サイバーエージェントのAI研究組織「AI Lab」が、進化計算分野の国際会議GECCO 2026で3本の共著論文を採択した。今回は、実環境で安全性を担保しながら最適化を進める手法や、データを説明する数式の多様な候補を生成する技術、混合整数最適化の理論的分析などが評価された。これらは広告やゲーム事業での高度な意思決定を支える基盤技術であり、産業応用と学術発展の両面で日本のAI競争力に寄与する成果である。

離散空間でも安全な探索を保証する新手法

1本目の論文は、システム破壊などのリスクを避けながら最適化を進める「Safe Optimization」を、0か1かのバイナリ変数に適用する手法を提案した。従来の安全領域予測モデルは連続変数が前提で、スイッチのオンオフのような離散的選択の最適化には不向きだった。今回の成果により、実サービスでの設定変更や、ユーザー体験を損ねるコンテンツを回避するクリエイティブ改善など、より現場に近い形での安全な自動最適化が可能になる。広告配信やゲームバランス調整といった領域で、試行錯誤のコストを抑えながら成果を出す道筋を示したといえる。

解釈可能なAIへ、多様な数式候補を提示する技術

2本目は、データを説明する数式を自動生成する「シンボリック回帰」に、解の多様性を重視するQuality Diversityの考え方を導入した。精度が高い単一の数式を求める従来手法に対し、今回は同程度の精度で構造の異なる複数の数式を同時に獲得する。これにより、分析者がドメイン知識と照らし合わせて最適な数式を選べるようになる。事業KPIの分解や新たな評価指標の設計といった場面で、AIが提示した根拠を人間が理解し判断する流れを強化する。データに基づく意思決定の透明性を高める点で、産業界の需要に合致した研究だ。

混合整数最適化の理論的基盤を解明

3本目は、連続変数と整数変数が混在する複雑な最適化問題で、標準的な整数処理が連続側の探索を妨げる場合があることを理論的に示した。同時に、先行研究で提案された新しい整数処理の有効性も理論面から証明している。これまで経験的に使われてきた手法の課題を数学的に明確にしたことで、より高性能なアルゴリズム設計への指針が得られた。ハイパーパラメータの自動調整や、計算資源の割り当て最適化といった現場の課題解決に直結する成果であり、AIモデルの効率的な運用基盤を支える理論研究として位置づけられる。

インターネット企業がAI基礎研究を続ける構造的意味

サイバーエージェントは今回でGECCOに5年連続採択となった。これは同社が単に既存AIのAPIを活用するだけの導入者ではなく、自社サービスで生じる制約下での最適化という固有の技術課題に、基礎研究レベルから取り組んでいることを示す。インターネット広告やゲーム事業では、配信ロジックやクリエイティブ生成、ユーザー体験の安全な改善に高度な探索技術を要する。自社に研究組織を持ち、大学と連携しながら国際会議で成果を発表するこの構造は、日本のIT企業がAI産業の応用レイヤーで独自の技術的優位を築く一つのモデルケースといえる。