GMOペパボ、博報堂DYホールディングス、日立製作所など4社は2026年7月21日、生活者や社会の視点から人工知能の研究・実装・政策提言を行う「人間中心のAIコンソーシアム」を設立した。AIの利活用が効率化に偏りがちな中、人間の創造性拡張という独自の軸を打ち出した産学連携組織の誕生は、今後の企業のAI導入方針やガバナンス設計に影響を与える可能性がある。
4社が発起法人、学術・法曹・産業界から30名が参画
コンソーシアムは一般社団法人として設立され、発起法人にはGMOペパボ、スマートガバナンス、博報堂DYホールディングス、日立製作所が名を連ねる。役員体制では、博報堂DYホールディングス執行役員CAIOの森正弥氏と慶應義塾大学教授の山本龍彦氏が代表理事に就任。理事には日立製作所の安立大介氏、GMOペパボCTOの栗林健太郎氏、スマートガバナンスCEOの羽深宏樹氏らが名を連ねる。発起人には一橋大学の生貝直人氏、エヌビディア合同会社の井﨑武士氏、楽天グループのTing Cai氏、トヨタ・コニックの山下義行氏など、学術界、法曹界、産業界から約30名が参画している。
4分科会で概念定義からユースケース創出までを推進
活動は4つの分科会に分かれて展開される。法学と情報学の専門家が座長を務める「HCAI概念分科会」では「人間中心のAI」の定義や理論的枠組みの整備を進める。生活者の意識調査を設計・分析する「生活者調査分科会」、AIとの協働による創造性向上の実証実験を企画する「創造性ユースケース分科会」、そして法的・倫理的課題への対応ルールを検討する「AIガバナンス分科会」である。この構成は、抽象的な理念の議論にとどまらず、具体的なデータ取得、実践的なPoC、制度化への働きかけまでを一気通貫で設計しようとする意図を示唆している。
AI実装の重心が効率化から創造性へ移行する可能性
コンソーシアム設立の目的は、AIを単なる自動化・効率化の手段ではなく「人間の創造性を高める存在」と位置づける点にある。プレスリリースでは、近年の生成AIやAIエージェントの発展が「出力内容の均質化」や「利用者の認知的努力の低下」といった課題を生んでいると指摘する。サービス提供者ではなく生活者を起点に据えたこの方針は、企業のAI導入判断においてROIや業務効率だけでなく、利用者の主体性やウェルビーイングといった評価軸を組み込む流れを加速させる可能性がある。
企業が今追うべきはガイドライン策定と賛助企業の動向
コンソーシアムは同日から賛助企業の募集を開始した。今後、AIガバナンス分科会が中心となり、企業が準拠すべきガイドラインの具体的な内容が議論されるとみられる。すでに日立製作所や博報堂DYホールディングスといった大企業が発起法人や理事として中核を担っていることから、策定されるガイドラインは業界標準としての影響力を持つ可能性がある。一方、コンソーシアムの運営資金や具体的なPoCの規模、政府との連携方法については、現時点では明らかにされていない。