OpenAIが2026年に計算資源へ5兆円規模の投資計画、ブロックマン氏が表明
OpenAIのグレッグ・ブロックマン社長兼共同創業者は、2026年に人工知能ソフトウェアを支える計算インフラへ500億ドル(約7兆5000億円)を投じる方針を明らかにした。この巨額支出はAIモデルの訓練と推論に必要な半導体やデータセンターの調達拡大を目的としており、OpenAIの成長戦略における転換点となる。
■ 500億ドルの内訳と狙い
ブロックマン氏が社外向け説明会で語ったところによると、2026年の計算資源支出は前年から倍増し、その大半は半導体メーカーやクラウド事業者との複数年契約に振り向けられる。OpenAIは既にマイクロソフトのAzure基盤を中核に据えるが、今回の支出計画には独自データセンター建設費用も含まれており、インフラの垂直統合を加速させる構えだ。
同社の生成AI「ChatGPT」は週間アクティブユーザー数が3億人を突破。マルチモーダル機能の強化に伴い、1回の推論にかかる計算コストが従来比で5倍以上に膨らんでいるとされる。OpenAI関係者は「需要に対して供給が恒常的に不足しており、2027年までに現在の5倍の計算能力が必要になる」との試算を明かす。
■ 業界に走る「電力調達競争」の波紋
この投資発表が市場に衝撃を与えたのは、AI業界全体の設備投資競争が「計算資源争奪戦」から「電力調達競争」へと変質しつつあるタイミングだからだ。調査会社650 Groupの最新予測では、ハイパースケーラー7社の2026年のデータセンター向け設備投資は合計2800億ドルに達し、このうち約15%がOpenAIによる支出で占められる計算になる。
電力インフラの制約は深刻だ。米国では主要データセンター建設計画の40%以上が電力供給の問題で遅延しており、OpenAIはマイクロソフトと共同で小型モジュール炉の導入を検討している。一方で、500億ドルの支出はOpenAIの営業キャッシュフローを大幅に上回るとみられ、ソフトバンクグループを中心とする総額5000億ドルの「スターゲート・プロジェクト」との連動が焦点になる。
■ 競合は「自前チップ」へ旋回
この規模の投資を単独で吸収できる企業は限られる。グーグルは自社開発のTPUで半導体調達コストを抑制し、アマゾンはTrainiumチップの最新版を投入。Anthropicはアマゾンとグーグルから計80億ドルを調達しつつ、独自計算基盤の構築に着手している。xAIもメンフィスのデータセンターで10万基のGPUを稼働させた。
これらに対し、OpenAIはエヌビディア製GPUへの依存度がとりわけ高い。ブロックマン氏は自社チップ開発について「選択肢の一つとして評価している」と述べるにとどめており、当面は調達力で勝負する戦略とみられる。半導体業界筋によれば、エヌビディアの2026年生産枠のうち最大で10%をOpenAIが確保する契約が進行中という。
■ 投資家心理とソフトバンクの思惑
500億ドルという数字は、ソフトバンクグループの2025年3月期の純利益見通し(約5100億円)の15倍近くに達する規模だ。にもかかわらず、ソフトバンクの孫正義会長兼社長が主導するスターゲート構想では、OpenAIの計算資源拡張が中核的な投資対象に位置づけられている。
ベンチャーキャピタル関係者は「短期的なキャッシュフローを重視する伝統的投資家には理解しがたいが、孫氏は電力・土地・半導体の物理的制約を先回りして押さえる発想だ。10年単位の独占的アクセス権を確保できれば、競合の新規参入を構造的に阻める」と分析する。実際、OpenAIの企業価値評価は最新ラウンドで3000億ドルを超え、収益の実態と評価額の乖離は拡大している。
■ 日本企業への浸透と商機
この投資拡大は日本市場にも波及する。ソフトバンクとOpenAIの合弁会社「SB OpenAI Japan」は2026年までに大規模データセンターを国内に新設する方針で、建設候補地として北海道と九州が挙がっている。NTTやKDDIも独自AI基盤の増強を表明しており、サプライヤーであるフジクラや古河電気工業の光ファイバー需要が急増。東京エレクトロンやレーザーテックといった半導体製造装置メーカーの受注残も過去最高水準で推移している。
SB OpenAI Japanの幹部は「日本企業のAI導入は2025年が『検証段階』だとすれば、2026年は『本格実装』の年になる。そのための計算基盤を国内に用意する必要がある」と述べ、OpenAIのグローバル投資計画との整合性を強調した。経産省の試算では、国内AI向けデータセンター投資額は2028年度に1兆2000億円に達する見通しで、OpenAIの巨額支出はこの流れをさらに加速させる触媒となる。