Sakana AIは2026年8月1日、大和証券とのウェルスマネジメント領域におけるAIプロジェクトを技術検証から本番開発フェーズへ移行させる。マーケット情報の収集・分析をAIエージェントが支援する仕組みが、同社の顧客提案業務を変える可能性がある。
技術検証から本番開発へ、2026年8月が転換点
両社は2025年9月に長期パートナーシップを締結し、証券ビジネスの高度化を目指してきた。第一段階としてマーケット情報の収集・分析に焦点を当てた技術検証を実施。Sakana AIが持つ「AIサイエンティスト」や「AB-MCTS」といった独自のAIエージェント技術を大和証券の業務フローに適用し、実用性を評価した。検証では情報収集・分析の各工程で有効性が確認され、本番開発への技術的基盤が整ったと判断された。2026年8月1日からの本番開発フェーズでは、この基盤をウェルスマネジメント領域の提案業務支援AIプロダクトへと発展させる。
証券ビジネスが直面する「提案の質」問題
資産形成や運用に関する顧客ニーズが多様化する中、証券会社には個々の顧客状況を深く理解した最適なコンサルティング提供が求められている。従来の提案業務は市場情報の収集や分析に多大な時間を要し、対面での相談に割けるリソースが制約されがちだった。技術検証では、こうした情報収集・分析プロセスをAIエージェントが支援することで業務を効率化しつつ、現場のフィードバックを取り込んで分析品質を継続的に向上させる仕組みの実現可能性が確認された。AIが定型業務を担うことで、担当者は顧客との対話や提案内容の質的向上に注力できる可能性がある。
国産AIエージェントが狙うエンタープライズ実装
今回の動きは、大規模言語モデル(LLM)を活用したチャット型支援を超え、特定の業務プロセス全体を自律的に実行するAIエージェント技術が金融機関の現場に浸透し始めたことを示す。Sakana AIの技術は、汎用的な生成AIとは異なり、研究やデータ分析の自動化を指向して開発された独自技術が核にある。大和証券への導入は、日本市場に特化した国産AI企業が、クラウドを介してモデルを提供するだけでなく、企業の業務システムに深く組み込まれる「導入レイヤー」で価値を発揮する事例となる。今後の展開では、社内への段階的展開が予定されており、単なる実験で終わらせず組織全体にスケールさせる計画が読み取れる。
今後の焦点は現場の変化と展開規模
本番開発フェーズではAIプロダクトの具体的な機能や性能、段階的展開の範囲や時期は現時点では明らかにされていない。重要なのは、この取り組みが実際にウェルスマネジメントの現場でコンサルティング品質をどの程度向上させ、顧客との接点をどう変えるかという効果検証である。また、大和証券グループ内での展開が成功した場合、日本の証券業界全体におけるAIエージェント導入のモデルケースとなる可能性がある。Sakana AIにとっては、金融領域での実績が他の産業分野への横展開の足掛かりになるかが次の焦点となる。