GMOサイバーセキュリティ byイエラエは、IoT製品メーカーがIPAのセキュリティ認証「JC-STAR」★1の適合評価を自社で行えるようになる実践講座を新設する。外部委託が常態化していた評価工程を内製化できる体制を構築することで、IoT機器メーカーは製品ライフサイクル全体にわたる継続的なセキュリティ品質の確保とコスト効率化を両立できる可能性がある。

評価レポート作成まで1日で完結させる講座設計

本コースの特徴は、制度理解に留まらず実機を使ったテストの実践と、申請に必要な証跡やチェックリストの作成方法までを1日でカバーする点にある。対象はJC-STAR★1だ。このレベルは広範なIoT製品に共通する基本的なセキュリティ要件を定めており、事業者による自己適合宣言で取得できる。講座ではRaspberry Pi Zero 2 Wを用い、ネットワークやBluetooth、USBといった主要インタフェースのテスト手法を習得する。受講料は機材準備込みで30万円、機材持ち込みで20万円。受講後、テスト環境とツール一式を自社に持ち帰り、すぐに評価業務へ活用できる設計は、外部コンサルタントに依存しない体制構築を強く志向している。会場は渋谷フクラスで、次回開催は2026年9月18日、定員は15名と少人数制をとっている。

公共調達におけるJC-STAR要件化が内製化を加速

この講座が生まれた背景には、IoT機器の脆弱性が社会インフラ全体のリスクとなる現状がある。IPAのJC-STAR制度は、製品のセキュリティ品質を共通の基準で可視化し、調達時の判断材料とすることを目的とする。特にJC-STAR★1認証は公共調達での要件化が進みつつあり、機器を納入するメーカーにとっては事業継続上、無視できなくなりつつある。しかし、実機テストには専門的な知識と技術が求められ、多くのメーカーが評価プロセスの内製化に課題を抱えてきた。GMOサイバーセキュリティ byイエラエは、自社の脆弱性診断サービスで培った知見を教育プログラムへと転換し、評価そのものを提供するのではなく、評価する能力を顧客企業に移転するビジネスモデルを選択した。これはセキュリティ人材の不足という構造問題に対する一つの解を示唆する。

セキュリティ産業におけるコンサルティングと教育の融合

この動きは、セキュリティサービスの提供形態が「診断の代行」から「診断能力の供給」へと重心を移しつつある兆候と捉えられる。GMOインターネットグループの連結企業である同社は、国内最大規模のホワイトハッカー組織を擁し、これまでもペネトレーションテストやフォレンジック調査など高度な技術サービスを提供してきた。新設する講座は、同社が運営する教育サービス「イエラエアカデミー」の一事業であり、オフェンシブセキュリティ資格取得コースなどと並ぶラインアップに位置づけられる。ここでは、現役のセキュリティエンジニアが講師を務め、実践知を直接伝達する。自社内で反復的な評価が可能になれば、製品のアップデートや新モデル投入のたびに外部委託費用が発生する構造から脱却でき、IoT製品メーカーの開発アジリティ向上に貢献すると考えられる。

IoT製品ライフサイクル全体への波及と残された論点

JC-STAR★1の自己適合宣言が内製化されることで、メーカーは出荷前の一点評価ではなく、ファームウェア更新時や脆弱性情報の公開時など、ライフサイクルを通じた継続的な再評価を実施しやすくなる。一方で、本コースが対象とするのはあくまで★1の自己適合評価であり、より高度な第三者認証を要する★2以上のレベルには対応していない。また、15名定員の集合研修という形式が、多品種少量生産を行う中小規模のIoTメーカーにどこまでリーチできるかは現時点では明らかにされていない。内製化の成否は、単に技術の習得に留まらず、評価プロセスを維持・更新する組織体制や責任者の配置といったマネジメント面の取り組みにかかっている。講座はその最初の一手を提供するものであり、教育効果の持続性についてはメーカー側の運用能力に委ねられる部分が大きい。