デジタル庁は令和8年熊本地震への対応として、被災自治体向けに生成AI基盤「ガバメントAI 源内」を緊急提供し、提供期間を9月30日まで延長した。行政機関が生成AIを災害対応の実務に投入する初期的な事例であり、自治体のデジタル体制とAI導入をめぐる実運用上の課題を示す。
源内の緊急提供と提供期間延長の事実
デジタル庁は2026年7月29日、被災自治体や災害対策機関がAIを用いて災害情報の集約・整理・共有を行えるよう、ガバメントAI 源内の提供を開始した。当初は3週間程度の提供期間を予定していたが、8月20日時点で9月30日まで延長すると発表している。併せて、デジタル庁が管轄する政府情報システムは8月4日時点で正常稼働を確認しており、災害対応の中で基盤システムの可用性が維持されていることも示された。
災害対応におけるD-CERTの運用と人員構成
デジタル庁は7月29日から災害派遣デジタル支援チーム(D-CERT)を被災地に派遣している。8月20日時点の派遣実績は延べ121人日で、内訳はデジタル庁職員17名、民間事業者13名となっている。被災地のニーズに基づきデジタル支援メニューの提案と具体化を行う役割を担っており、行政職員と民間事業者が混在するチーム構成は、公共分野におけるAI・デジタル人材の外部調達および官民協働の実務モデルとして注目される。
マイナポータルを経由する罹災証明書のオンライン申請
被災者向け支援策の申請に必要な罹災証明書について、マイナポータルおよび各自治体システムを活用したオンライン申請の案内が7月31日に開始された。被災者生活再建支援金の給付や税・保険料・公共料金の減免・猶予など、複数の行政手続に関わる書類取得が対象となる。これにより、AIを含むデジタル基盤と本人確認・行政手続の接続が、災害対応という非日常的な状況下でどの程度機能するかが試される。
行政AI調達と自治体導入に与える構造的影響
今回の源内提供は、政府が整備したAI基盤を地方自治体が利用する構造を取る。GPUやクラウド基盤を各自治体が個別に調達するのではなく、政府側で整備されたモデルやAPIを自治体が利用する中央集約型の配布モデルであり、導入コスト・運用負担の分散に一定の合理性がある。一方で、民間事業者がD-CERTに参加していることから、AI運用の現場支援やプロンプト設計を含むサービス領域で、行政向けAI市場の潜在需要が表面化する可能性がある。