サム・アルトマンの取引疑惑を共和党が調査OpenAI上場前にSEC審査要求
OpenAI共同創業者サム・アルトマンの個人投資活動に対し、米共和党が調査に乗り出した。下院監視委員会の共和党議員と6州の共和党系司法長官が、新規株式公開を準備する同社に対し証券取引委員会の審査を要請している。発端はウォール・ストリート・ジャーナルが報じた一連の利益相反疑惑である。
下院監視委が動いた経緯
共和党が多数を占める下院監視・説明責任委員会は3月、アルトマンCEOの過去の投資判断に関する調査を開始した。委員会のジェームズ・コマー委員長はAI業界における市場支配力の集中懸念に言及しつつ、OpenAIが非営利組織から営利企業へ移行する過程での意思決定を精査する構えを示している。
焦点はアルトマンが運営する個人投資ファンドを通じ、OpenAIと取引関係にあるスタートアップに資金を投入していたか否かだ。WSJの報道によると、取引先企業の一部はOpenAIのAPIを利用しており、投資家としての立場と経営者の責務が交錯する構造が浮かび上がっている。
6州司法長官がSECに審査要請
共和党系の州司法長官6名は連名でSECのゲイリー・ゲンズラー委員長宛てに書簡を送付した。署名したのはユタ、テキサス、ルイジアナ、サウスカロライナ、モンタナ、インディアナの各州司法長官で、いずれも共和党に近い人物である。
書簡は「一般投資家が知り得ない情報を背景にした内部者取引や利益相反の有無」を調査するよう要求している。OpenAIは非公開企業だが、上場を視野に入れた資金調達を進めており、SECの管轄範囲内にあるとの立場を示した。
OpenAIの上場と評価額の高騰
OpenAIは2025年までに860億ドル超の評価額での資金調達を完了し、市場関係者の間では2026年内のIPOが確実視されている。ブルームバーグの報道によれば、同社の年商はすでに20億ドルを突破し、法人向けChatGPTサービスが収益の柱に育った。
IPOを控える企業にとって経営陣のコンプライアンス問題は上場審査の重大な障害になり得る。米国では過去にWeWorkやTheranosの例が示す通り、創業者の個人取引が企業価値を毀損するケースが相次いでいる。
非営利組織から営利企業への移行問題
OpenAIは2015年に非営利研究機関として発足し、2019年に「上限付き営利部門」を設置した。現在は非営利の理事会が営利子会社を支配する特殊な統治構造を持つが、IPOに向けてこの形態を変更する見通しである。
共和党側は非営利組織の資産を用いて開発されたAI技術が、営利化の過程で特定個人に利する構造になっていないかを問題視している。アルトマンはOpenAIの株式を直接保有していないと公言してきたが、Yコンビネータ時代から続く投資ファンドの実態には不透明な部分が残るとの指摘がある。
イーロン・マスクの訴訟と重なる疑念
今回の調査はイーロン・マスクがOpenAIを提訴した裁判とも時期が重なる。マスクは2024年、同社が非営利の設立趣意書に反して営利化を急いでいるとして告訴した。共和党議員はマスクの主張に直接言及していないものの、非営利から営利への転換プロセスへの監視を強めている。
アルトマン側は疑惑を否定し、「すべての投資活動は適法かつ透明性をもって行われてきた」との声明を発表している。SECが正式調査に着手するかどうかは今後の推移を見守る必要がある。
日本市場への波及リスク
OpenAIのコンプライアンス問題は日本企業のAI採用戦略にも影を落とす。ソフトバンクグループは2023年にOpenAIとの合弁事業を発表し、国内企業向けにカスタマイズしたAIサービスの展開を進めてきた。NTTやKDDIもChatGPTの法人導入を加速させている。
米国でIPO前に経営陣の法的リスクが顕在化すれば、日本企業が契約しているSLAやデータ保護条項の見直しを迫られる可能性がある。とりわけ金融機関や官公庁はベンダーの安定性を入札条件とするため、上場プロセスの混乱は国内IT業界全体の調達判断に影響を及ぼす展開も想定される。
共和党の調査要請はAI産業の成長路線に冷水を浴びせるリスクをはらみ、資金調達環境の変化を見据えた経営判断が問われる局面に入った。