LegalOn Technologiesは8月4日、契約書レビュー支援サービス「LegalOn」に、過去の契約書に付されたWordコメントをAIで横断検索できる機能を追加した。契約書の最終的な本文には残らない、レビュー担当者の指摘や交渉過程の記録を組織で再利用可能にし、法務業務の属人化を解消する一手となる。
最終契約書に残らない知見を検索対象に
契約レビューでは、過去に同様の条項に対して行った指摘や、特定の取引先との交渉で用いた表現を参照しながら対応方針を検討する場面が多い。しかし、そうした記録はWordコメントとして個別ファイルに埋もれ、担当者の記憶や経験に依存してきた。LegalOn Technologiesが8月4日に提供を開始した新機能は、「LegalOnアシスタント」に質問するだけで、保存済みの契約書に付されたWordコメントを横断検索できるようにするものである。検索条件として作成者、取引先、契約類型、期間などを指定でき、複数条件を組み合わせた質問にも対応する。
検索から返信案作成までを同一画面で完結
この機能は、単に過去コメントを提示するだけではない。LegalOnのエディターで契約書を開いている場合、現在の契約書に付されたコメントと類似する過去コメントを検索し、それぞれのコメントごとに過去事例をまとめて提示できる。さらに、「過去の類似コメントを参考に返信案を作成して」「過去の表現を参考に、少し柔らかいコメントにして」といった指示を与えることで、過去の対応や表現を踏まえた返信案や新規コメントの草案を生成する。契約書レビューから離れることなく、検索・参照・草案作成という一連の作業をAIエージェント上で行えることが特徴である。
法務AI市場で進む属人知見の構造化
今回の機能追加は、法務特化型AIの競争領域が、条文の解析やリスク指摘から、組織内に散在する暗黙知の活用へと拡大していることを示唆する。LegalOnは弁護士監修コンテンツや外部情報との連携を謳っており、単なる契約書管理ツールではなく、ナレッジが業務の中で自然に蓄積される環境を志向している。契約書本文のデータベース化に加え、コメントという非構造データを検索・再利用可能にすることは、AIモデル自体の性能向上だけでなく、導入企業内のデータ構造化が価値の源泉になるという、企業向けAIの現実的な競争軸を浮き彫りにする。
利用企業にとっての実務的影響と残る論点
法務部門を抱える国内企業にとって、この機能は属人的なナレッジを組織資産へ転換する直接的な手段となり得る。しかし、コメントには相手方との交渉過程や未確定の判断が含まれるため、検索範囲やアクセス権限の設計、機密情報の取り扱いが実運用上の課題として残る。また、過去コメントの蓄積量が少ない企業や、Wordコメントを利用していないワークフローを持つ企業にとっては効果が限定的になる可能性もある。一次情報では、コメントの保存期間やアクセス制御の詳細、AIが生成する返信案の品質水準については明らかにされていない。