LegalOn Technologiesは、社内文書AI審査サービス「DocumentOn」の景品表示法(景表法)審査機能をアップデートした。AIが広告表現の違反リスクを高・中・低に分類し、類似の行政処分事例を提示する機能が加わり、企業は優先度の高いリスクから対処できるようになる。広告規制の厳格化に伴い増大する法務確認の工数に対し、AIが判断根拠付きで優先順位づけを支援する実用化が進んだ。

アップデートの核心:リスクの抽象判定から重要度と根拠の同時提供へ

今回のアップデートで最も特徴的な点は、弁護士監修のAIが広告内の個々の表現に対し、景表法違反や行政処分のリスクを「高・中・低」の3段階で重要度判定するようになったことだ。単に「リスクがある」と指摘するのではなく、「No.1」表示の根拠として客観的な調査が引用されているかどうかを文脈から判断し、たとえばイメージ調査に基づく場合はリスク高と判定する。同時に、「常識的な誇張」の範囲内の表現はリスク低と抑制的に扱う。これにより、過剰な指摘に埋もれることなく、真に対応すべき表現へと人手を集中させられる設計となっている。

設計思想が反映する規制環境と現場の逼迫

この機能アップデートは、2023年のステルスマーケティング規制導入、2024年の課徴金割増と刑事罰導入など、景表法を取り巻く規制強化を背景としている。プレスリリースも認めるように、課徴金命令は1件あたり数億円から十数億円に大型化している。一方、企業の制作・マーケティング部門は審査工数の限界に直面しており、「全件審査が回らない」という現場の切実な声があった。今回のAI審査は、単なる法令違反の有無という二者択一を超え、「業務上の優先順位付け」という現実的な要求に応える点で、従来のAIリーガルチェックツールとの違いがあるとみられる。

画像対応と校正機能で広がる業務適用範囲

アップデートでは、JPEG・PNG形式の画像ファイルへの対応も新たに追加された。製品パッケージに限らず、SNS広告やバナー画像のように、画像として完結する広告表現が一般化する中で、テキスト主導だったAI審査のカバー範囲を拡大する動きと言える。同時に、誤字脱字や表記ゆれを検出する校正機能も搭載された。これはブランド毀損リスクの低減に直接寄与するものであり、広告審査という法務的文脈の外側にある、制作現場の運用管理ニーズまで取り込もうとする製品戦略がうかがえる。

今後の論点:専門AIのカバレッジ拡大と責任の所在

LegalOn Technologiesは、今後「DocumentOn」に薬機法や食品表示法といった他法令の審査機能を追加予定であると発表している。広告審査という入り口から、専門特化型のAIが企業のコンプライアンス業務に浸透する可能性を示している。しかし、AIが提示する「リスク高」という判定とその根拠事例を、最終的な広告表現の可否判断にどう結びつけるかは、依然として利用企業の法務判断に委ねられる。AIの示す過去の処分事例を参照するプロセス自体が、組織のアカウンタビリティ(説明責任)の質を変えていくかどうかが、実装段階の焦点となるだろう。