LegalOn Technologiesは、自社の法務AIプラットフォーム「LegalOn」に、複数の契約書を横断分析する「ファイル分析機能」を搭載した。ユーザーは自然言語で確認したい内容を入力するだけで、AIが条項の有無や内容を比較し、契約管理情報と紐づいた一覧表を自動生成する。この機能は、これまで手作業に頼っていた契約審査やデューデリジェンスの工程を変える可能性がある。

自然言語の問い合わせから複数契約の一覧比較へ

新機能の中核は、ユーザーが「再委託禁止条項が含まれる契約を確認したい」といった日常的な日本語を入力するだけで、AIが分析観点とプロンプトを自動生成し、対象となる複数の契約ファイルを横断的に解析する点にある。分析結果は条項の有無だけでなく、具体的な内容も含めて表形式で一覧化される。従来、法務担当者が数百件の契約書を一件ずつ開き、該当箇所を探してスプレッドシートに転記していた作業が大幅に削減される設計だ。このアプローチは、AIが単に文書を検索するだけでなく、法務知識に基づいて比較・構造化するタスクを代行することを意味する。

契約管理データとの融合が示す業務システムとしての進化

この機能のもう一つの特徴は、AIによる分析結果を、契約締結日や取引先名、契約類型といった「LegalOn」上で管理されているメタデータと同一画面上に並べて表示できることだ。これにより、例えば「特定の取引先との契約だけに不利な損害賠償条項がないか」「法改正前に締結された古い契約にリスク条項が残存していないか」といった、実務に即した複合的な分析が可能になる。ここには、AIによる文書解析を独立した機能として提供するのではなく、契約管理システムのデータ基盤と統合することで、業務プロセス全体の効率化を狙うLegalOnの製品戦略が表れている。

法務AI市場における「作業代行」の射程拡大

今回の発表は、法務領域におけるAI活用が「一つの契約書をレビューする」段階から、「企業が保有する契約ポートフォリオ全体を分析する」段階へと移行しつつあることを示している。M&Aの法務デューデリジェンスや、法改正・事業方針変更に伴う全社的な契約のリスク棚卸しは、これまで弁護士や法務人材の多大な工数を要してきた領域だ。LegalOnの機能は、それらの高単価な業務の一部をソフトウェアで代替しうることを示唆する。自然言語による指示だけで複雑な分析を実行できるUIは、AI技術に詳しくない法務実務家にとっても障壁が低く、市場における導入拡大を後押しする可能性がある。

今後の焦点は分析精度と意思決定支援への接続

今後検証すべきは、AIによる分析の正確性と、その結果を法務判断にどう結びつけるかという点だ。とりわけ、表現の揺れが大きい契約書間での条項の同一性判断や、文脈を踏まえたリスク評価の精度は、実務での信頼獲得に向けた継続的な課題となる。プレスリリース内では、分析結果から契約書本文を直接確認できる点が強調されているが、これはAIの判断だけに依存させないための設計とみることもできる。LegalOnが有する弁護士監修のナレッジベースと、この横断分析機能の連携深度が、今後の競合との差別化要因になるだろう。