リーガルテック企業のLegalOn Technologiesは、法務特化型AIエージェント「LegalOnアシスタント」に、法律事務所ZeLoが監修したプロンプト群を追加した。雇用契約書やM&A契約書といった専門性の高い契約類型について、ユーザーが確認の観点や指示文を自ら設計することなく、法規制適合性や交渉リスクの点検を開始できるようになる。プロンプト設計の内製化が困難だった法務現場に、外部専門知見をパッケージ化して提供する動きとして注目される。
専門家の確認観点をプロンプト化、4類型で提供開始
今回追加されたのは、法律事務所ZeLoが作成・監修した4種類のプロンプトである。具体的には、雇用契約書の労働法令適合性チェック、M&A関連契約の条項抜け漏れ確認、データ処理契約(DPA)の法令適合性チェック、およびDPAの交渉ポイント抽出の4つ。いずれもユーザーは確認したい契約書を開き、該当するプロンプトを選択するだけで、契約書の内容に即した分析結果を得られる。従来はユーザー自身が確認すべき論点を整理し、前提条件を踏まえた指示文を作成する必要があったが、その負荷を軽減する設計となっている。
汎用AIでは補えない法務領域の信頼性を担保
法務業務では、法令上の記載要件や当事者の権利義務、交渉リスクなど多岐にわたる観点からの検討が求められる。汎用的なAIチャットサービスでは、こうした専門的判断に必要な文脈や最新の法改正を踏まえた回答を得ることが難しく、誤った解釈を誘発するリスクも指摘されてきた。今回の機能追加は、企業法務に通じた法律事務所の実務知見をプロンプトに組み込むことで、AIの回答精度と信頼性を高めるアプローチである。法律事務所ZeLoはM&A、労働法務、データ保護に強みを持ち、所属弁護士が外部評価機関でも高い評価を受けていることが、プロンプトの品質の裏付けとなっている。
AI産業における「ドメイン特化型」の競争軸が鮮明に
今回の発表は、AIの導入競争が汎用モデルの性能競争から、特定業務領域への深い適合性を競う段階へ移行していることを示している。LegalOn Technologiesは、自社のAIエージェントに弁護士監修のコンテンツやプロンプトを組み合わせることで、一般的な大規模言語モデルでは実現しにくい専門業務の効率化を図る。この動きは、APIを通じて基盤モデルを活用する企業が、独自のデータや専門家ネットワークを付加価値として競争する、AI産業の「アプリケーション層」における差別化戦略の一典型といえる。
法務人材の役割を「確認作業」から「判断」へシフト
この機能が浸透することで、法務担当者や企業の契約実務者の業務内容は変容する可能性がある。法令適合性チェックや条項の抜け漏れ確認といった定型的ではあるが高度な注意力を要する作業をAIが代替することで、人間は取引における最終的な判断や、より戦略的な交渉方針の策定に集中できるようになる。プレスリリースでも「法務チームがより重要な思考と判断に集中できるよう支援する」と言及されており、AI導入による単純な省力化を超えて、専門人材の役割を再定義するものとして位置づけられている。