エクサウィザーズは2026年10月14日開催の「AI Innovators Forum 2026」で、三井住友フィナンシャルグループCEOや日本マイクロソフト幹部ら第2弾登壇者を公開した。金融、小売、教育、通信など産業横断で経営層が登壇する構成は、生成AI導入が実証段階から収益化と組織変革の議論へ移行したことを示している。
経営層の登壇が示すAI投資の重心移動
公開されたタイムテーブルでは、基調セッションに三井住友フィナンシャルグループCEO中島達氏が登壇し、「投資倍増に込めた経営の覚悟」をテーマとする。大手金融グループの最高経営責任者が投資方針を語る場を設けることは、AI関連予算が研究開発や実証実験の段階から、本業の収益構造と資本配分を変える経営課題へ昇格したことをうかがわせる。続くセッションでは、ベネッセコーポレーション副社長の山口文洋氏、良品計画の横濱潤氏らが「AIファーストカンパニー」について議論する。教育と小売という労働集約的な業種の経営幹部が登壇することは、ホワイトカラー業務の効率化だけでなく、顧客接点や商品開発などバリューチェーン全体へのAI適用が議題になっていることの表れとみられる。
戦略論と事業創出に広がるプログラム構成
今回の発表で目立つのは、一橋大学の楠木建氏と日本マイクロソフトの浅野智氏による「AI時代の競争戦略」、Scrum Ventures宮田拓弥氏とディー・エヌ・エーの住吉政一郎氏による「AIネイティブ時代の新規事業」など、単なる技術導入事例の紹介を超えたセッションが組まれている点だ。『AI収益進化論』著者の麻生要一氏と東京ガスの清水精太氏による「AIを使う企業から、AIで稼ぐ企業へ」というテーマも、APIやモデルを社内利用するだけでなく、AIを組み込んだサービスやプロダクトを外販する収益構造への移行を、既存事業会社がどう設計するかに踏み込む内容を示唆する。プログラムの時間割は、午前中に経営戦略、午後に新規事業創出、夕方に社会課題とフィジカルAIへ展開しており、AIを起点に企業の成長戦略を再設計するためのフレームワークを提供する構成になっている。
主催企業の立場と国内AI産業における位置
エクサウィザーズは自社を「AIを利活用したサービス開発による産業革新と社会課題の解決」に取り組む企業と位置づけ、東証に上場するAI関連企業である。同社が大手企業の経営者を集めるカンファレンスを主催することは、自社のAIプラットフォームや開発リソースを、産業界のAI導入を支援する中核的なインフラとして位置づけようとする意図が読み取れる。大規模言語モデルを提供する海外クラウド事業者、AIエージェントを組み込むSaaS企業、導入支援を担うシステムインテグレーターという産業レイヤーのうち、エクサウィザーズは導入支援と自社プロダクト開発の間を埋める役割を担う。協賛スポンサーの募集を同時に開始したことは、クラウド基盤、データ整備、セキュリティ、業務特化型AIなど、導入に必要な周辺企業を取り込み、自社を中心とした国内AI導入エコシステムを形成しようとする動きとみることができる。
今後の論点は実行力と収益化の分岐点
カンファレンスのテーマである「覚悟と熱意」という抽象的な言葉の背後にあるのは、AI投資をどれだけの期間、どのような収益指標で評価するのかという経営上の難題である。金融機関の投資倍増表明、小売や教育での導入拡大、新規事業創出への活用といった議題は、AI導入の初期段階を終えた企業が直面する、固定費化したクラウド利用料やGPU関連コストを回収できるかという課題と直結する。今後は、登壇企業が実際にどのようなAIプロダクトを提供し、どの部門の生産性や売上をどの程度向上させたのかという成果指標の開示が焦点になる。現時点では各社の具体的な投資額やAI関連の売上目標は一次情報に示されていないため、カンファレンス当日にどこまで定量データが語られるかが、国内AI市場の成熟度を測る一つの観測点になる。