デジタル庁は行政手続のオンライン化を進めており、2026年8月に次期オンライン申請サービスの先行実証対象を更新した。出生届や児童手当など生活に直結する手続で、入力負担の軽減と行政側の審査効率化を同時に図る。実証に参加する自治体と対象手続の広がりは、自治体システム市場と住民向けデジタル接点の変化を測る指標となる。
先行実証の対象自治体と手続の広がり
2026年7月31日時点の先行実証参加自治体は横須賀市、裾野市、熊本市、菊池市、日出町、都城市の6市区町である。対象手続は出生連絡票、出生届、児童手当、乳幼児医療費助成、上下水道使用開始届、出産育児一時金申請、重度心身障がい者医療費受給資格認定申請、国民健康保険の加入・脱退届など。開始時期は手続ごとに異なり、出生連絡票と上下水道使用開始届は2025年4月、出産育児一時金と重度心身障がい者医療費は2025年6月、出生届や児童手当、乳幼児医療費、国民健康保険関連は2026年4月に始まった。今回の更新で先行実証の対象が増えたことが示されており、2026年9月以降の本格運用に向けて展開地域が広がっている段階である。
住民の入力負担と行政の審査工程への影響
次期オンライン申請サービスで実現を目指す内容として、デジタル庁は三つの方向性を示している。まず住所・氏名・家族情報は一度登録すれば申請のたびに入力する必要をなくす。次に自治体などが保有する情報を申請フォームに転記することで、住民の入力負担と行政職員の審査負担を減らす。さらに申請内容の補正連絡や通知書のオンライン送付により、行政手続のオンライン完結を目指す。これにより、住民側では申請の離脱率低下や手続時間の短縮が、自治体側では紙や窓口対応を前提とした業務フローの見直しが生じる可能性がある。一次情報は画面イメージを開発中のものとしており、実際の操作性や対応範囲は今後の実証結果に依存する。
自治体システムとサービス事業者への波及
この施策はマイナポータルの電子申請機能を基盤としており、既存の「ぴったりサービス」を活用する自治体向けスタートガイドや独自様式登録手順の整備も進められている。次期オンライン申請サービスが本格運用に入れば、自治体の業務システムや申請フォームを提供する事業者には、自治体が保有する情報との連携や、申請内容の補正・通知をオンラインで完結させる機能への対応が求められる。56手続と呼ばれる地方公共団体が優先的にオンライン化を推進すべき手続のうち、処理件数が多く効果が高いとされる手続が実証対象に選ばれており、子育て・介護・被災者支援などの分野で導入が先行している。今回の資料では、粗大ごみ収集の申込や研修・講習・イベント申込といった56手続以外の取り組み事例も示されており、対象範囲は今後さらに広がる可能性がある。
利用者接点としてのマイナンバーカードの位置
一次情報では国民の約8割が2025年12月末時点でマイナンバーカードを保有しているとされ、オンラインで申請可能な手続の拡大とカードのメリット拡大を目指すとしている。罹災証明書の発行申請は2023年3月末時点で1,002自治体においてオンラインで可能となっており、住民と自治体の双方から利便性向上の声が示されている。マイナンバーカードを利用した行政手続が増えることは、住民が行政サービスに接する際の認証手段としての定着度を高めると同時に、自治体側では窓口業務からオンライン処理への移行を促す。ただし一次情報はオンライン化の進捗状況について自治体ごとの対応状況を一覧で公開しており、地域差や手続ごとのばらつきが存在することを示唆している。