サイバーエージェントは、2024年入社の新卒社員を代表取締役とする子会社「サイバーティカル」を設立した。縦型ショート動画に特化したマーケティング支援を目的としており、広告市場におけるSNSアルゴリズムとクリエイター経済の重要性が組織設計に直接反映された事例である。
新卒社長の抜擢と7年ぶりの文化継承
サイバーエージェントは2024年、同社に新卒入社したばかりの伊藤翼を株式会社サイバーティカルの代表取締役に据えた。サイバーエージェントの「新卒社長」抜擢は7年ぶりとなる。伊藤はインターネット広告事業本部動画本部で動画コンサルティングを経験し、入社同年に月間MVPとベストバッテリー賞を受賞している。今回の人事は、若手に大きな裁量を与える企業文化の継続を示すと同時に、変化の速いショート動画市場に即応するための組織戦略でもある。
縦型ショート動画特化の事業構造
サイバーティカルは、YouTubeの横型動画からTikTokやInstagramの縦型動画まで、全SNSの広告とアルゴリズムを把握することを強みとする。同社はTikTok Shopにおける総合コンサルティング事業を立ち上げ、公式パートナー認定であるTSP、TAP、CAPの3つを既に取得した。タイアップ広告の企画・セールスに加え、Eコマース機能との連携まで手掛ける点が、従来の広告代理店とは異なる。
クリエイター起点のマーケティングへの転換
発表からは、単なる広告枠の売買ではなく、「売れるクリエイターの特徴把握とリレーション構築」を中核に据えていることが読み取れる。2025年のTikTok広告攻略として「クリエイティブは数で勝負」「ショートドラマに勝機」との見解が付随するリンク先で示唆されているが、記事本文からはアルゴリズム理解に基づくPDCAの高速回転が競争力の源泉となると考えられる。
広告業界レイヤーへの波及
この子会社設立は、広告市場の担い手が大手クライアントの予算管理から、SNSプラットフォームの仕様変更とクリエイター生態系に適応する構造へと移行していることを示している。従来のインターネット広告事業本部が担ってきた領域を、専門子会社として切り出すことで、意思決定の速度と専門性を確保する。広告主にとっては、縦型ショート動画に特化した知見へのアクセスが増える一方で、広告会社の機能分化が進むことになる。
着眼点:AIの要素はどこにあるか
一次情報の中に「AI」への直接言及は存在しない。しかし、全SNSのアルゴリズム把握を強みとすることや、TikTok Shopのようなプラットフォーム経済への対応は、膨大なデータに基づくレコメンデーションAIが支配する市場を前提としている。サイバーティカルの事業は、AIが駆動するプラットフォーム上でのマーケティング最適化を人力とクリエイター発想で勝ちにいく試みであり、過渡期のビジネスモデルとして位置づけられる。