サイバーエージェントが企画・制作したメルカリの広告作品が、YouTube Works Awards Japan 2026のGoogle AI活用部門でGoldを受賞した。この受賞は、単なる広告賞の獲得ではなく、広告制作の企画から分析までをGoogle AIで完結させる「AI-Native Marketing」がビジネス成果に直結した事例として、広告業界の制作プロセス変革を示している。

Google AIで完結した広告制作の実態

受賞作品「やさしいメル﨑」は、メルカリの未利用層が抱く「なんとなく不安」という心理的障壁を払拭することを目的とした。サイバーエージェントは累計数十億件の取引レビューやSNSのコメントからAIで「優しさ」を抽出し、Geminiを活用して実体験に基づく20の物語を制作した。企画から分析までの全工程をGoogle AIで完結させた点が、従来の広告制作における人間主導のクリエイティブ開発や市場調査と明確に異なる。配信はコネクテッドテレビを通じて年末年始に実施し、家族内での対話を誘発する戦略を取った。

好感度42.1%が示すAIネイティブ施策の成果

本施策の結果、ブランドへの好意度は42.1%に達し、直近2年間のタレント非起用広告でNo.1のブランドリフトを達成した。また、ダイレクト広告の獲得効率は13%改善している。これらの数値は、AIによる大規模データの抽出と生成モデルの活用が、ブランド指標と獲得効率の両方を同時に向上させ得ることを示す。特に、タレントを起用しない施策で高いブランドリフトを記録した点は、AIを活用した制作が人件費や出演料などのコスト構造を変えながら、効果では劣らない可能性を示唆する。

広告制作レイヤーに及ぼす構造的影響

今回の受賞は、広告制作における労働集約的なプロセスが、クラウド上のAIモデルとAPIを活用した資本集約的なプロセスへ移行し得ることを示している。広告代理店のビジネスモデルは従来、企画力や制作力を持つ人材の時間を販売する構造が中心だった。しかし、Google AIを全工程で活用する手法は、モデル利用料とプロンプト設計・データ選定のノウハウが価値の中心となるレイヤーを作る。サイバーエージェントが同時にファイナリストとして選出されたリクルートの「じゃらんで家族旅行♪」篇も同部門であり、AI活用が特定企業の事例ではなく業界全体の競争軸になりつつある。

AIネイティブ広告が迫る人材と評価の転換

広告制作のAIネイティブ化は、制作現場の人材に求められる能力を変化させる。従来のコピーライターや映像ディレクターの技能に加え、AIモデルの特性理解、プロンプト設計、学習データの選定、生成結果の品質評価という役割が重要になる。一方で、広告効果測定の標準指標であるBrand Lift SurveyがAI活用施策の評価にもそのまま使われている点は、測定手法の変化が技術の変化に追いついていない可能性も示す。特に日本では広告主の成果指標が短期的な獲得効率に偏る傾向が強いため、ブランド指標と獲得指標の両方を向上させた本事例は、国内広告市場の評価体系にも再考を促す。