サイバーエージェントが組織設計に関する二つの新組織を立ち上げた。「ゴールデザイン室」は目標設定を個人のセンスから集合知へと転換し、「マネージャーエンパワーメント室」は管理職の伴走支援を担う。同時に、AI研究所による進化計算の研究成果も発表され、同社は技術開発と組織開発の両面からAI時代への適応を進めている。

目標設計を科学する新組織の狙い

「ゴールデザイン室(GD室)」は、これまで属人的とされてきた目標設定プロセスに集合知を導入するための専門組織である。サイバーエージェントは従来「目標はセンス」とする企業文化を持っていたが、事業規模の拡大と市場変化の加速に伴い、目標設計の再現性と精度を高める必要に迫られたことが背景にある。具体的な手法や人員規模は明らかにされていないが、同社の全社横断プロジェクト「CAITAC」とも連動し、ITガバナンスの枠組みの中で機能することが示唆される。

伴走型支援でマネージャーの孤立を防ぐ

「マネージャーエンパワーメント室(ME室)」は、管理職層の葛藤に寄り添い、組織運営上の課題解決を伴走支援する役割を担う。AI技術の導入が進む現場では、技術理解と人材マネジメントの両立が管理職の負荷を高める傾向にある。同室の設置は、そうした構造的課題への対応策と位置づけられる。NTTドコモの顧客体験変革を支援するUI/UX戦略の事例にも見られるように、同社は外部企業に対しても組織と技術の接点を設計するノウハウを蓄積しており、ME室はその内製版とも解釈できる。

進化計算研究と組織開発が交差する先

2026年7月、同社のAI Labは進化計算分野のトップカンファレンス「GECCO 2026」で3本の共著論文が採択されたと発表した。進化計算は、生物の進化プロセスを模倣して複雑な最適化問題を解く技術であり、広告配信やサービス設計など同社の主力事業との親和性が高い。GD室の目標設計手法にも、こうしたAI研究の知見が応用される可能性がある。ただし、論文内容と新組織の具体的な接続関係については現時点では明らかにされていない。

AI時代の組織論に投げかける示唆

一連の組織改編は、AI導入が進む企業に共通する「技術と人間の接続」という課題への先行的な応答と読める。目標設定の科学化とマネージャー支援の制度化は、AI活用の効果を組織全体で最大化するための基盤整備である。日本企業においては、AI導入時の現場抵抗や管理職の役割再定義が遅れる事例が指摘されており、同社の取り組みは広告・メディア業界を超えて、サービス業や製造業など多様なセクターに参照される可能性がある。