サイバーエージェントが運営する動画配信サービス「ABEMA」は、2026年上半期の人気番組ランキングを発表した。開局10周年を迎えた同サービスにおいて、10年目を迎える長寿シリーズ『今日、好きになりました。』が総合1位と2位を独占し、過去最高の視聴者数を記録した。この結果は、無料配信を基盤としたプラットフォームにおける、継続的なオリジナルIPへの投資がもたらす競争優位性を裏付ける事例となる。
長期IP『今日好き』がすべての記録を更新
総合1位の『今日、好きになりました。夏休み編2025』は、これまでの全シリーズ中の週間視聴者数と総視聴者数の最高記録を更新した。さらに、2016年のABEMA開局以降に配信されたすべてのオリジナル番組を通じた週間視聴者数の最高記録も達成している。総合2位には同シリーズの別編、総合4位には姉妹番組『すーぱーのびしろたいむ』が入り、上位5番組の過半数を同一IPの関連作品が占めた。SNS動画の再生数ランキングでも、このIP群が1位と2位を占めており、番組本編の視聴とSNS上の二次流通の両面で高い集中を示している。
「作ると届けるの一体化」が生む二重の集客構造
この結果を単なる人気コンテンツの誕生と捉えるだけでは不十分だ。発表内でサイバーエージェントは、クリエイターとマーケターが一体となって「作る」と「届ける」を分断しない戦略性に言及している。総合ランキングとSNS再生数ランキングの上位が類似するという事実は、番組本編がSNS上で切り抜かれ拡散されることで、非視聴者へのリーチと本編への還流を同時に実現する循環モデルが機能していることを示す。作品制作とマーケティングの組織的統合は、有料サブスクリプションとは異なる収益基盤を持つABEMA固有の競争要因として位置づけられる。
無料基盤モデルの競争力と残る論点
ABEMAは登録不要かつ基本無料というモデルを開局以来維持しており、今回のランキング上位番組もすべて無料視聴が可能な作品である。月額1,180円の「ABEMAプレミアム」や月額680円の「広告つきABEMAプレミアム」といった有料プランは存在するが、主力となるのは無料層の大規模な視聴基盤と広告収入の組み合わせだ。長期IPが広告単価の向上に与える影響や、広告収入のみで制作費を賄う経済性の成立条件が、今後の焦点となる。また、他社が有料独占配信へ傾斜するなかで、無料配信の限界と差別化の持続性をどう両立させるかも、開局10周年を超えたABEMAの事業構造の論点として浮上している。
動画配信市場の差別化軸としてのIP継続投資
国内外の動画配信市場では、定額制サービスが独占配信作品の獲得に多額の投資を続けている。これに対し、ABEMAの今回の結果は、特定のIPを年単位で継続的に制作し、視聴者との長期的な関係を築く手法が、作品単体の話題性とは異なる競争軸を形成しうることを示唆している。『今日好き』シリーズの参加者たちが成長し新たな番組へと展開する構造は、IPの多層化による視聴者接点の持続的な創出を可能にしている。ただし、この手法の再現性や、特定IPへの過度な依存リスクについては、現時点では明らかにされていない。