米ウォール街がAI主役交代を予感 半導体株でインテルとAMD急騰

人工知能向け半導体市場で主役交代の兆しが鮮明だ。23日の週、米インテルとAMDの株価が前週比でそれぞれ13%超、マイクロン・テクノロジーが15%超急伸する一方、これまでAI相場を牽引してきたエヌビディアの上昇率は3%未満にとどまった。投資家の関心がGPUからCPU、そしてメモリーへと急速に広がっている。

AI投資の矛先がCPUとメモリーにシフト

23日の米国市場でインテル株は週間上昇率13.4%を記録し、2023年11月以来の大幅高となった。AMDも13.1%上昇し、7週間ぶりの高値水準を回復している。半導体メモリー大手のマイクロンに至っては15.2%高と、昨年12月以来の強い買いを集めた。フィラデルフィア半導体指数の構成銘柄のうち、この3社が週間上昇率の上位を独占した格好だ。

これに対し、AI向けGPUで9割超のシェアを持つエヌビディアの上昇率は2.8%にとどまった。同社株は年初来でなお70%高と驚異的なパフォーマンスを維持しているが、今回の資金流入の勢いは明らかにライバル勢へ向かった。バンク・オブ・アメリカのアナリスト、ビベク・アリア氏は「AIの覇権争いはGPUからデータセンター全体のアーキテクチャへと戦場を移しつつある」と分析する。

生成AI需要がデータセンター投資の常識を書き換える

この株価変動を単なる出遅れ株買いと片付けてはならない。背景には生成AIの急速な普及に伴うデータセンター投資の構造変化がある。ChatGPTに代表される大規模言語モデルの学習には依然としてGPUの並列処理能力が不可欠だが、実際の推論や企業向けサービス提供の段階では、CPUと高速メモリーの組み合わせがコスト効率と性能の両面で優位に立つ場面が増えている。

モルガン・スタンレーが今週公表したリポートによれば、2025年のデータセンター向けCPU需要は前年比18%増の890億ドル規模に達する見通しだ。特にAMDのEPYCプロセッサは、クラウド大手が自社開発するAI推論用サーバーの心臓部として採用が急拡大している。インテルも次世代Xeonプロセッサ「Granite Rapids」の出荷を開始し、AIワークロード向けの巻き返しを図る。

メモリー分野では、エヌビディアの最新GPU「H200」が搭載するHBM3Eの供給元としてマイクロンが存在感を高めている。サムスン電子とSKハイニックスが寡占するHBM市場で、マイクロンのシェアは2024年の一桁台から2025年末には20%超へ跳ね上がると市場予測は示す。

エヌビディア帝国に亀裂か 競合の反転攻勢

エヌビディアのデータセンター向け売上高は2025年1月期に前年比112%増の475億ドルと驚異的な数字を叩き出した。しかし競合環境は急速に変化している。AMDは昨年12月に投入したAI向けGPU「MI300X」の販売が想定を上回り、2025年の同事業売上高目標を40億ドルから60億ドルへ上方修正した。

インテルもファウンドリー事業でAIチップの受託製造を拡大している。同社はアマゾン・ウェブ・サービスとの間で、カスタムAIチップの複数年製造契約を締結したと先月発表した。エヌビディアの牙城を崩すには至らないものの、顧客企業が単一サプライヤーへの依存度を下げようとする動きは加速している。

シティグループの半導体アナリスト、クリストファー・デイリー氏は「AI投資の波は第2幕に入った」と指摘する。「第1幕がGPUというショベルの売り手に集中したゴールドラッシュだったとすれば、第2幕はデータセンターという鉱山全体の効率化競争だ」。

日本市場にも波及 装置・素材メーカーに追い風

この動きは日本企業にとっても無縁ではない。東京エレクトロンはメモリー向け成膜装置の受注が2025年に入り急回復している。アドバンテストはHBM向け検査装置の需要拡大を受けて、今期の業績予想を2度上方修正した。CPUとメモリーの両面で需要が高まるなか、製造装置や検査装置、半導体材料を手がける日本企業にとっては、AI特需のすそ野が広がる恩恵を享受できる構図だ。

みずほ証券の半導体アナリストは「GPU一強から複数デバイスへの分散投資は、むしろ装置・素材メーカーにとって好循環を生む。異なる製造プロセスに対応する装置需要が喚起されるからだ」と述べる。

分散投資の潮流は一過性か構造変化か

2025年後半を見据えると、焦点は分散投資の持続性にある。AMDはMI300Xの後継となる「MI400」を2026年に投入する計画で、ロードマップの実行力が問われる局面に入る。インテルは18Aプロセスによる自社製AIチップの量産を2025年中に軌道に乗せられるかがカギだ。

一方でエヌビディアは次世代GPUアーキテクチャ「Rubin」を2026年に前倒し投入するとの観測もあり、サイクル的に再びGPUへ資金が集中する可能性も残る。半導体市場の調査会社テックインサイツは「推論市場の拡大ペース次第では、CPUとGPUの需要比率が2030年までに現在の2対8から5対5へ変わるシナリオもありうる」と予測する。AI半導体の覇権地図は、本格的な書き換え局面に入った。