世界最大級の資産運用会社が支えるバージニア州データセンター計画が新聞広告の手続きミスで頓挫

米国バージニア州ラウドン郡で進められていた巨額データセンター開発計画が、地元紙への公告を巡る事務的なミスによって白紙となった。ブラックロックとブルックフィールド・アセット・マネジメントという世界有数の資産運用会社が出資する事業体が関わったこのプロジェクトは、世界的なデータ需要の高まりを受け、推定総工費数十億ドルに上る一大拠点となるはずだった。

デジタル砦の建設を阻んだ新聞公告の誤り

開発を主導したのは、ブラックロックのオルタナティブ投資部門とブルックフィールドの関連会社が資金を投じたパワーハウス・データ・センターズである。同社はラウドン郡内の複数区画で約100万平方フィート(約9万3000平方メートル)規模のデータセンター新設を計画し、郡の土地利用審査を求めていた。

問題は同社が地元紙に掲載した公聴会の告知公告で発覚した。公告には審査対象となる土地の面積や用途区分に関する誤記があり、郡当局によると、この記載不備が州法の要件を満たしていないと判断された。結果として、パワーハウスは一連の承認プロセスを最初からやり直すことを余儀なくされた。プロジェクト関係者の一人は「単純な転記ミスが数年の遅れを生みかねない事態だ」と述べ、計画の大幅な見直しが不可避であるとの見方を示した。

世界最大のデータセンター集積地で何が揺らぐのか

バージニア州北部は、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の米国東海岸基幹拠点を筆頭に、世界のクラウドトラフィックの約7割が通過するといわれるデータセンター銀座である。ラウドン郡は通称「データセンター・アレイ」の中核で、郡経済開発局の2023年報告によれば、固定資産税収の約3割をデータセンターが占める。

この地域では近年、電力供給と土地利用を巡る住民の反対運動が激化している。ドミニオン・エナジーは2022年、データセンターの新規接続遅延を表明し、郡当局も用途地域規制を強化する動きを見せていた。今回の手続きミスは、そうした逆風下での運営リスクを浮き彫りにし、他の開発案件にも審査厳格化の連鎖を及ぼす可能性がある。市場調査会社ストラクチャー・リサーチは、北米のデータセンター建設遅延に伴う機会損失が年間で120億ドル規模に達すると推計しており、ラウドン郡の停滞は業界全体の供給逼迫に拍車をかけるとの分析を示した。

資産運用大手が群がるデジタルインフラ市場の構図

ブラックロックとブルックフィールドは低金利時代の終焉とともに、伝統的な不動産からデジタルインフラへ資金をシフトさせている。ブラックロックのインフラストラクチャー部門は2023年に運用資産残高が500億ドルを突破し、同年に買収したグローバル・インフラストラクチャー・パートナーズのポートフォリオにデータセンター事業を組み込んだ。ブルックフィールドもデータセンター運営大手のサイラスワンやコンパス・データセンターズを通じて北米に計10カ所超の開発拠点を持つ。

両社が競合するのが、同じカナダ系でマッコーリー傘下のエアトランクや、シンガポール政府系ファンドが出資するエコーストーリーである。いずれも年金基金や政府系ファンドの超長期資金を原資としており、データセンター取得競争は土地と電力容量の確保合戦の様相を呈している。

代替調達先として浮上するアジア、日本市場への含意

北米の供給逼迫は、日系クラウド事業者のインフラ戦略にも影響を与え始めている。日本データセンター協会のまとめでは、2025年に首都圏と京阪神で稼働予定の延床面積は前年比4割増に達し、NECネッツエスアイやさくらインターネットなど国内事業者の設備増強が相次ぐ。バージニアの案件遅延が長期化すれば、米国へのサーバー集約を前提としてきた日系企業が日本国内やシンガポールへの代替配置を加速させるとの見方が、野村総合研究所のITインフラアナリストから出ている。

許認可リスクが変える施設投資の採算計算

パワーハウス社の失態は、機関投資家の間でデューデリジェンス項目の再点検を促す契機となっている。これまで土地取得と電力契約に偏っていたリスク評価に、自治体の条例順守や公告手続きの正確性が第三の重点項目として浮上した。ブルックフィールドの広報担当はコメントを控えたが、業界幹部は「手数料収入を急ぐ開発会社へのプレッシャーが、現場のケアレスミスを誘発している」と指摘する。

ラウドン郡で現在審査待ちとなっている大型案件は約20件にのぼり、郡議会は公告基準の統一解釈を定める作業部会を設置した。パワーハウス社の再申請が2025年後半以降にずれ込めば、北米のクラウド容量不足は一段と深刻化し、AWSやマイクロソフトの設備投資計画にも修正を迫る公算が大きい。