CoreWeave CEOが警鐘、NVIDIAのAI供給不足でAMD移行加速も 需要爆発に対応必須と指摘
米GPU特化型クラウド事業者CoreWeaveのマイケル・イントレイター最高経営責任者(CEO)は、NVIDIAに対しAI向け半導体の供給能力を大幅に拡大しなければ、顧客が競合AMDのプロセッサへ大規模に流出するリスクがあると警告した。データセンターの拡張を加速させるCoreWeaveの戦略表明は、AIインフラ市場における供給逼迫の深刻さと、NVIDIA一強体制に変化が生じる可能性を浮き彫りにした。
CoreWeaveが示すNVIDIA依存の限界点
CoreWeaveのイントレイターCEOは複数のメディアに対し、現在のAI需要は供給を完全に上回っており、NVIDIAの生産キャパシティ不足がボトルネックになっているとの認識を示した。同社は2024年以降、大規模言語モデルの学習や推論処理を実行するため、NVIDIAのH100や次世代Blackwell GPUを大量に調達してきた実績を持つ。
しかしCEOの口調は厳しく、「NVIDIAが必要な数量を提供できないなら、顧客は選択肢をAMDのMI300Xやその後継品に求めるしかない」と断言した。CoreWeave自身も既存顧客の需要を満たすため、AMD製GPUの大規模導入を積極的に検討している段階にあるという。AI特化クラウド事業の最大手が公然とマルチベンダー戦略を示唆した意味は大きく、供給網の再編が現実味を帯びてきた。
ビットコインマイナーIRENとの大規模コロケーション契約
警告の背景には、CoreWeaveが豪州系データセンター運営企業IREN(旧Iris Energy)と締結した大規模インフラ契約の進展がある。IRENが公表した資料によると、CoreWeaveはテキサス州チャイルドレスに位置するIRENの専用データセンターにおいて、最大120MWの電力容量を確保するコロケーション契約を2026年まで延長するオプションを行使した。
この施設では現在、NVIDIAのH100およびH200 GPUを搭載したサーバー群が稼働しており、CoreWeaveはわずか数カ月で50MW分の設備を立ち上げている。IRENの共同CEOであるダニエル・ロバーツ氏は投資家向け説明会で「CoreWeaveとの協業は想定以上の速度で拡大しており、追加の電力供給契約も協議中だ」と述べ、同社の収益構造がビットコイン採掘からAIインフラ提供へ急傾斜している実態を明らかにした。
NVIDIAの生産計画に歪み、AMDが市場浸透を加速
NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは2024年第3四半期決算説明会で「Blackwellの需要は驚異的」と述べ、TSMCやSK hynix、Micron Technologyなどのサプライチェーン全体で生産能力を増強中だと強調した。だが、CoreWeaveのような大口顧客ですら調達の不足感を公言する現状は、大型クラスター構築を急ぐハイテク企業の不満が臨界点に近いことを示している。
一方のAMDはMI300XがH100比で1.3倍のメモリ帯域幅を持つ点を訴求し、Microsoft AzureやOracle Cloud Infrastructureが既にMI300Xインスタンスの一般提供を開始している。投資家アナリストの間では「2026年度後半までにAMDがAIアクセラレータ市場シェアの10%突破は確実で、その後は加速する」との予測が出ており、CoreWeave CEOの発言はこのトレンドに現実味を加えた格好だ。
CoreWeaveが描く1.2GW規模のAIインフラ拡充とリスク
CoreWeaveは現在、北米と欧州に合計28カ所のデータセンターを保有・運用しており、これらを2027年までに総計1.2GWのIT負荷容量に到達させる構想を打ち出している。IREN以外にも大手不動産デベロッパーやエネルギー事業者との接続協定が相次いでおり、資金調達ではシルバーレイクやマグネット・キャピタルなどが主導した11億ドルのシリーズCラウンド以降、110億ドル超の負債・株式調達枠を確保済みだ。
しかしGPUメーカーをNVIDIAに集中させている現行調達モデルは、単一障害点を抱えているに等しい。CEOのAMD移行警告は、裏を返せばCoreWeave自身の事業成長制約そのものであり、IREN案件での高速立ち上げ成功によって急拡大路線に弾みがつくほど、半導体確保の成否が業績を直接左右する構造はより鮮明になっている。
日本企業が直視すべきAIインフラ供給不足の連鎖
CoreWeaveのAMDシフト示唆は、日本市場にも波及するテーマである。ソフトバンク傘下のSB IntuitionsやNTTデータ、KDDI等が国産大規模言語モデルやAIデータセンター構想を掲げる中、GPU調達の難航は国内事業者にとっても共通の経営課題だ。特にNTTデータはAMDとの協業を早期に発表し、2025年にはMI300XベースのAI基盤を商用提供する計画を公表している。
CoreWeave CEOの口調から透けて見えるのは、AI需要がGPUサプライチェーンの強化スピードをはるかに超えて進行する地政学的リスクと産業育成のジレンマである。NVIDIAの次世代製品が出そろう2026年までに、AMDがエンタープライズグレードのソフトウェアエコシステムを整備できれば、AIインフラの調達戦略は質的に変化する。CoreWeaveのような供給サイドの決断が、業界再編の呼び水になる可能性は否定できない。