市場全体が軟調でもMicron株が続伸、記憶装置需要の底堅さ浮き彫りに

個人投資家の熱狂が燻り続ける中、米Micron Technologyの株価が市場全体の軟調な推移に逆行して上昇している。背景には生成AI需要の拡大に伴う高帯域幅メモリの供給逼迫があり、アナリストの間では今回の上昇が一時的な現象ではないとの見方が強まっている。

個人投資家の関心が集中する理由

ソーシャルメディア分析を手掛けるApeVueのデータによると、Micronは過去1週間で「ソーシャルメディア上で最も話題になった銘柄」の上位にランクインした。2024年に入り小売投資家の間でAI関連株への選好が加速しており、同社はNvidiaに次ぐ人気を集めている。

株式フォーラムやX(旧Twitter)では「AI半導体の次の勝者」としてMicronを挙げる投稿が目立つ。特にHBM(高帯域幅メモリ)分野でのサムスン電子、SKハイニックスとの競争に注目が集まり、個人投資家の買い注文が株価を押し上げる構図が続く。

生成AI需要がもたらす構造変化

Micronが手掛けるHBMは、GPUと並んで生成AIの演算処理に不可欠な部品である。2024年第2四半期決算ではデータセンター向け売上高が前年同期比で2倍以上に拡大し、同社経営陣は「HBMの2025年生産枠はすでに完売している」と明言した。

Morgan Stanleyのアナリスト予測では、HBM市場は2024年の150億ドル規模から2027年には400億ドル超へ拡大する。DRAM価格全体の下落局面においても、HBMだけは需給が逼迫する「製品ミックス効果」がMicronの収益を強力に下支えしている格好だ。

アナリストが指摘する株価上昇の持続力

市場全体がS&P500指数の調整局面に入る中でもMicron株が堅調なのは、業績見通しの上方修正が相次いでいるためだ。UBSは3月下旬、目標株価を従来の130ドルから155ドルに引き上げ、「HBM需要は供給能力を少なくとも2026年まで上回る」との見解を示した。

一方、シティグループは「メモリ市況のサイクル特性を過小評価すべきではない」と警鐘を鳴らす。景気後退リスクが顕在化すればPC・スマートフォン向けDRAMの需要が急減し、HBMの利益成長を相殺する可能性があると指摘している。

業界再編の地殻変動

今回のMicron株上昇は、メモリ業界の競争軸が単純な微細化競争からAI向けソリューション提案力へ移行していることを示す。長らく3位に甘んじてきた同社が、HBM世代交代のタイミングでサムスン電子の開発遅延に乗じてシェアを伸ばしている現状が投資家の買い安心感につながっている。

業界筋によれば、MicronのHBM3E製品は消費電力あたりの性能で競合を上回り、Nvidiaの次世代GPU「Blackwell」シリーズへの採用が確実視される。この技術的優位が少なくとも2025年末まで持続するとの見方が株価に織り込まれつつある。

日本市場への波及と半導体装置の追い風

Micronの設備投資拡大は日本の半導体製造装置メーカーに恩恵をもたらしている。同社は広島工場にHBM生産ラインを増設中で、2025年までに総額50億ドル規模の投資を計画。東京エレクトロンやアドバンテストなどの日本企業が大口受注を獲得しており、東証の半導体株指数を押し上げる一因となった。

MicronのSanjay Mehrotra CEOは3月の決算説明会で「広島は当社のHBM戦略において極めて重要な拠点」と述べ、日本のサプライチェーンとの連携深化に言及した。個人投資家の過熱感は拭えないものの、実需に裏打ちされた設備投資の連鎖が日本企業の業績にも波及している点は見逃せない。