エクイニクス・ジャパン、NTT東日本、さくらインターネットの3社は、NTTの光通信構想IOWNの中核技術APNを用いて、さくらの石狩データセンターとエクイニクスの東京拠点を低遅延・大容量で接続する概念実証を2026年後半から開始する。AI計算資源が都市部に集中する中、遠隔地のデータセンターをあたかも同一拠点のように活用できるか検証するこの試みは、日本のAIインフラの配置戦略そのものを見直す契機となる。
IOWN APNが可能にする拠点間接続の実力
本実証の中核は、NTT東日本が提供するAll-Photonics Connect powered by IOWNを用い、北海道石狩市と東京を光波長のまま直結する点にある。全区間で光信号を電気変換せず伝送するAPNの特性により、理論的には大容量かつ低遅延の通信が実現する。実証ではスループットや遅延といった実環境での性能を測定し、AIの学習や推論、データ前処理といった実際のワークロードに耐えうるかを評価する。従来の広域ネットワークでは困難だった、数百キロメートル離れたGPUクラスタを一体的に運用できるかが焦点だ。
計算資源の「分散配置」を促す電力と土地の制約
今回の取り組みの背景には、生成AIの普及による計算資源需要の急増と、それに伴う電力・土地の逼迫がある。大規模なGPUクラスタを都心部に集約するのは物理的・経済的に難しくなりつつあり、北海道のような冷涼で再生可能エネルギーが豊富な地域への分散配置が現実的な選択肢となっている。しかし、離れた拠点間で大容量データを頻繁にやり取りするには、通信遅延が障壁となる。本実証は、この「距離」の問題を光技術で克服し、立地の自由度を高める可能性を探るものだ。
エコシステムの結節点エクイニクスが果たす接続ハブ機能
東京側の接続拠点を担うエクイニクスは、単なるデータセンター事業者ではない。Equinix Fabricなどの相互接続基盤を通じて多数のクラウドやネットワーク、企業が集積するエコシステムのハブ機能を持つ。石狩の計算基盤と東京都心のエコシステムをIOWN APNで直結した後、エクイニクス拠点から各企業のプライベートクラウドやパブリッククラウドへシームレスに接続する構成が想定されており、閉域かつ高性能なハイブリッドクラウドの新たな形態が検証されることになる。
運用とセキュリティ、商用化への論点
実証では性能評価に加え、監視、障害切分け、アクセス制御、ログ管理といった運用面とセキュリティ面の要件整理も進められる。広域分散環境でAIワークロードを安定的に運用するには、ネットワークの可視性と制御性が欠かせない。またコストとサステナビリティの観点からも評価が行われ、企業や自治体、研究機関との連携を視野に入れた段階的なサービス化が目指されている。性能が出ることと、事業として成立することは別問題であり、実装上の課題を明確化することが本実証の重要な役割となる。