台湾と韓国の株価指数が半導体大手3社で歪む異様な上昇

2025年のアジア新興国市場で、台湾と韓国の株式相場が特異な局面を迎えている。両市場の代表的指数である台湾加権指数(Taiex)と韓国総合株価指数(Kospi)は史上最高値圏を更新し続ける一方、上昇を牽引する銘柄はTSMC、サムスン電子、SKハイニックスという3社に極端に集中する。指数全体の上昇が人工知能(AI)向け半導体に依存する構図に対し、市場関係者からは相場の持続性とゆがみを懸念する声が強まっている。

台湾と韓国で続く史上最高値ラリー

台湾加権指数は2025年に入り年初来で22%を超える上昇を記録し、2万3000ポイントの大台を突破した。韓国Kospiも同期間に18%超の上昇となり、3000ポイントを回復して2021年以来の高値圏で推移する。両指数の上昇率は、MSCI新興国市場指数の同期間上昇率8%を大幅に上回る。

ブルームバーグの集計データによると、台湾加権指数の上昇寄与度の72%をTSMC1社が占める。韓国Kospiではサムスン電子とSKハイニックスの2社で上昇寄与度の61%に達する。この3社が両市場から除かれれば、残りの構成銘柄の平均リターンはほぼゼロに近づく計算だ。

3社の時価総額合計は1兆3000億ドルを超え、両取引所全体の時価総額の半分以上を占める。指数算出上のウエートが巨大化した結果、3社の株価変動が国全体の市場動向を決定づける構造が固定化している。

AI半導体ブームがもたらす需給構造の偏り

この集中の背景にあるのが、生成AI需要を起点とした半導体特需である。TSMCはエヌビディア向け先端AIチップの独占的製造を続け、2025年第1四半期の売上高は前年同期比38%増の235億ドルに達した。SKハイニックスはAI用高帯域幅メモリー(HBM)で世界シェアの9割超を握り、2024年通期の営業利益は過去最高の25兆ウォンに迫る見通しである。サムスン電子もHBM市場への本格参入を受け、半導体部門の利益が4四半期連続で過去最大を更新している。

アナリスト予測では、これら3社の2025年度1株当たり利益(EPS)の平均成長率は前年比45%超とされる。指数全体のPER(株価収益率)が20倍を超えてもなお、割高感よりもAI半導体の成長期待が買いを呼ぶ展開が続く。世界的なAI投資ブームに乗り、海外機関投資家の資金流入は今年に入り台湾で180億ドル、韓国で120億ドルを超えた。

広がる「見せかけの好況」への懸念

指数の高騰とは裏腹に、両国経済の実態は一枚岩ではない。台湾の1月から3月期の鉱工業生産指数は半導体を除けば前年同期比でマイナスに転じ、韓国でも中小製造業の景況感指数は4四半期連続で基準線の100を下回る。LGエレクトロニクス、現代自動車、ポスコフューチャーエムなど主要輸出企業の株価は、年初来で軒並み下落基調にある。

ゴールドマン・サックスのアジア担当チーフストラテジストは「指数の騰勢はAI半導体3社の業績と完全に同期しており、国家経済の実力と株式市場の間に乖離が生じている」と指摘する。過去のITバブル期と類似点を挙げるアナリストもおり、AI需要が減速した際に指数が急落するリスクが繰り返し議論されている。

日本市場が直面する類似構造と警鐘

この構造問題は日本市場にも示唆を与える。日経平均株価は東京エレクトロンやアドバンテストなど半導体製造装置大手の上昇に支えられ、2025年3月に一時4万円台を回復した。TOPIXにおける半導体関連の時価総額比率は約18%に拡大し、過去10年で最高水準に達している。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券のストラテジストは「台湾と韓国で顕在化した指数の歪みは、日本の TOPIX にも徐々に忍び寄っている。半導体の好循環が続く間は問題が表面化しないが、逆回転した際の影響は計り知れない」と警鐘を鳴らす。

個人投資家と政策当局のジレンマ

個人投資家の資金も一極集中を加速させている。韓国取引所によると、2025年第1四半期に個人投資家がサムスン電子とSKハイニックスに投じた買い越し額は45億ドルに達し、全個人売買の35%を占めた。台湾証券取引所のデータでも、TSMCへの個人買いは同期間で過去最高の90億ドルに膨らんでいる。

金融当局の対応は難しい立場にある。台湾中央銀行と韓国銀行は指数急落時の金融システムへの波及を定量的に試算し始めたが、明示的な規制や注意喚起は行っていない。マクロプルーデンス政策の観点からは特定セクターへの過度な信用集中を抑制すべきだが、AI半導体が両経済の成長エンジンである現実を無視できないためだ。

ETFを通じた非意図的な集中投資の加速

構造問題を複雑にするのが、指数連動型のETF(上場投資信託)を通じた資金の自動流入である。台湾と韓国で上場するETF純資産総額は2024年末時点で合計3800億ドルを突破し、3年前の2倍に膨らんだ。投資家が地理的分散を意図してETFを購入しても、実際にはTSMC、サムスン電子、SKハイニックスの3銘柄に資金の5割以上が自動配分される。

EPFRグローバルの資金フローデータでは、2025年第1四半期のアジア新興国向け株式ETF流入額580億ドルのうち、実に390億ドルがこの3銘柄の購入に充てられた計算になる。意図せざる集中投資の拡大は、市場全体の脆弱性を静かに高めている。