データセクションは2026年6月17日、複数の主要AIモデルを単一アカウントで利用できるデバイス「OHMAI」を発表した。ユーザーはChatGPTやClaudeなどの各AIモデルと個別に契約することなく、タスクに応じた最適なモデルをこのデバイス経由で利用できる。この製品は、AIモデル間の競争がユーザーの囲い込みから、使い勝手を軸にした統合体験へと重心を移しつつある市場の変化を示している。
断片化するAI利用環境への対応
現在、ビジネスや日常業務で複数の生成AIを使い分ける動きが広がる一方、モデルごとに異なるアカウントやサブスクリプションを管理する手間が新たな課題として浮上している。OHMAIは、データセクションが提供する単一アカウントで複数のAIモデルにアクセスできる仕組みを採用し、この煩雑さを解消する設計だ。ユーザーはテキストや音声で指示を出すだけで、システムが「TAIZA」と呼ぶスマートルーティング機能を通じて最適なモデルを自動選択する。AIの性能競争が一段落し、利用体験の統合が次の差別化要因になりつつあることを示す製品といえる。
物理デバイスが意味するAIレイヤーの再編
OHMAIは月額$3.99のサブスクリプションと、$9.99(OHMAI Light)または$99.99(OHMAI Pro)のハードウェアで構成される。これは、クラウド上のAIモデルとエンドユーザーをつなぐ新たなインターフェースレイヤーが、ソフトウェアだけでなく物理デバイスとしても成立しうることを示している。AIモデル自体の開発ではなく、モデルへのアクセスと統合のレイヤーで収益を立てる構造であり、AI産業のスタックにおいて、モデル提供者と利用者の中間に立つ「AIアクセス集約層」の萌芽として位置づけられる。ハードウェアの販売元として株式会社MSS、市場開拓でソリッドインテリジェンス株式会社が関与していることも、この新たなレイヤーを複数社で形成する動きと読める。
日本企業によるグローバル展開の設計
データセクションは東証グロース上場の日本企業であり、製品の初公開の場にパリのViva Technology 2026を選んだ。価格はドル建てで、展開地域も米国、欧州、日本と国際市場を前提としている。これは、日本国内のAI需要だけでなく、グローバル市場でAI統合インターフェースという領域を獲得しようとする戦略の表れだ。VivaTechへの出展は、単なる欧州市場へのプロモーションにとどまらず、約18万人の来場者と3,600名の投資家が集まる場で、日本発のAIビジネスモデルを国際的に提示する意図があると考えられる。
パーソナルAI基盤をめざすロードマップ
同社はOHMAIの将来像として、ユーザーの承認のもとでタスクを代行するエージェント型ワークフローの導入や、複数デバイス連携、外部サービスとの統合を計画している。さらに中長期的には「パーソナルAI OS」として、仕事と生活の両面を支える基盤を構想する。これは、AIアシスタントという単一機能から、個人のデジタル活動全体を統合する制御層へと製品を進化させるロードマップだ。実現にはOSと呼べるだけのエコシステム形成が不可欠であり、現時点では初期段階の構想と見るのが妥当だが、AIの提供形態がアプリからデバイス、そして環境へと拡大する方向性を示している。