米クラウド企業CoreWeaveが欧州展開を加速している。ロンドンに欧州統括拠点を置き、英国に2カ所、北欧・スペインに3カ所のAI最適化データセンターを開設。投資総額は約22億ドルにのぼり、欧州企業が低遅延でAI計算資源を調達できるルートが拡大する。
欧州5拠点の内訳と再エネ100%の選択
CoreWeaveは2025年末までにノルウェー、スウェーデン、スペインの3カ所にデータセンターを開設し、これらを100%再生可能エネルギーで稼働させる計画だ。これに先立ち英国でも2拠点の開設と13億ドルの投資を発表しており、欧州域内の合計投資額は約22億ドルに達する。データセンターの電力調達において再エネ比率を100%とすることは、EUの厳格な環境規制と顧客企業のESG要件の双方を満たす設計判断である。
ロンドンに欧州本部、米クラウド企業では異例の動き
CoreWeaveはロンドンを欧州の本社拠点とし、同社初の欧州オフィスを設置した。CEOのマイク・イントレイターは「ロンドンは重要なAIハブ」と位置づけ、物理的な拠点拡大を「CoreWeaveの次の成長段階における重要なマイルストーン」と表現している。スナク英首相もこの進出を「英国のAI・テクノロジー超大国としての地位を強化する」と評価した。米系クラウド企業が英国を欧州統括拠点に選ぶ判断の背景には、Brexit後のデータ主権環境への適応がある。
「データ主権クラウド」が欧州市場で競争軸に
CoreWeaveが強調するのは「データ主権を備えたクラウド」という設計思想だ。同社の欧州インフラは、EUおよび英国の規制要件に準拠し、顧客データを域内に留めたままAIワークロードを処理できる構造を持つ。低遅延性能を全ワークロードで確保する設計と、Kubernetesベースの専用アーキテクチャの組み合わせが、既存の汎用クラウドとの差異化要素となる。GDPR対応やデータローカライゼーションが必須の欧州企業にとって、インフラ選定の新たな選択肢が加わることになる。
欧州AI開発者の「容量不足」に応える供給拡大
CoreWeaveは今回の展開理由として、欧州企業がAIインフラの容量不足や目的に適した基盤を見つけられていない現状を挙げている。最新GPUとAI特化型Kubernetes構成を備えた5拠点の稼働により、ローカル企業が低遅延で大規模AIモデルの学習・推論を実行できる環境が提供される。欧州のAIラボやスタートアップにとって、米国リージョンを経由せずに高性能計算資源へアクセスできることは、開発速度とコンプライアンスの両面で意味を持つ。
AI特化クラウドの欧州上陸がもたらす構造変化
汎用クラウドの従量課金モデルとは異なり、CoreWeaveはGPUに最適化された専用インフラで「AIハイパースケーラー」を標榜する。欧州にAIワークロード特化型の大規模クラウドが進出することで、AWSやAzure、GCPが支配してきた欧州クラウド市場に、ワークロード別の住み分けが進む可能性がある。特に大規模言語モデルの学習や推論に特化した需要を取り込む構造が欧州で機能するかは、AI開発エコシステムの成熟度合いを測る指標にもなる。